それは、まるで。 ページ38
Aside
『佐野、私を梵天に入れて』
この一年で分かったことがある。それは、自分が欲深い人間だということ。そして、その欲と愛は更に大きく、深くなっていたこと。今日、私は佐野に着いていこうと思ってここに来た。これが佐野に会える最後のチャンスだと思ったから。
佐野の目をジッと見つめる。
また目の下の隈が酷くなっていた。
「ダメだ」
『何で?今はもう何も知らなかったあの頃とは違う。もう私の事なんて守らなくていい。私が貴方の隣にいたいの』
「お前までこっちに来る必要はない」
『ほら、また私を守ってる』
私は佐野の顔をグイッと持っていきそのままキスをした。角度を変えて何度も何度も。最初は佐野も少し目を見開いたが、受け入れるように目を閉じ、私のされるがままだった。
分からないなら分からせてやる。私がどれだけ貴方を愛していて、どれだけ貴方の隣にいたいかを。もう、貴方を独りにさせないから。貴方が安心して眠れるように、私が傍にいるから。
だから、どうか、
『私を愛して…っ』
小さくか細く、そう呟いた。すると、触れるだけだったキスは佐野に舌をねじ込められることによりだんだんと深くなる。分かってる。佐野は私の事を愛してくれている。ちゃんと分かってる。でも、その隣に立つことを許してはくれない。
佐野は名残惜しそうに舌を離し、立ち上がる。
「お前が俺の隣にいたくても、俺がお前の隣に立てないんだ」
『…』
「愛してる。これからもずっとずっと、永遠に。
_______だから、もう終わりにしよう」
「今日はそれを言いに来た」佐野はそう言うと少しずつ石段を降りて行く。
一瞬、ほんの一瞬だけ、時が止まった。その言葉を理解するまでの時間だ。そして、その意味を理解した時、私の目からは大量の涙が溢れ出た。私は声を大きく上げ、佐野を止める。
『…嫌っ!!そうやってまた私を置いてくの?』
「…」
『突き放すつもりなら、最初から私の家に来ないで、私を
期待だけ残して、私の前から消えないで。
佐野は「ごめん」と呟いて、降りていた石段を再び上がり始める。私の頬を伝う涙を人差し指ですくう。触れられた部分が少し熱く感じた。
「俺の事、忘れんなよ」
『…前も同じこと言ってた。ずるいじゃんそんなの』
「愛してるよ、A」
それは、まるで呪いのように。
彼は私に触れるだけのキスをした。
・
「…お前を愛して、ごめんな」
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エリザベス女王 - う、、、目から滝が、、、!武道のタイムリープで幸せになってるといいですねぇ、、、✨三途君の恋が、、、あの裏には恋心があったなんて、、、⁈伏線回収上手すぎです‼︎素敵な小説ありがとうございました! (2022年7月29日 19時) (レス) @page47 id: c75fcc9307 (このIDを非表示/違反報告)
ひめ☆そら(プロフ) - ち ゆ。さん» ちゆたん…!!こちらこそ読んでくれてありがとう( ᵒ̴̶̷̥́ ⌑ ᵒ̴̶̷̣̥̀ ) (2021年10月30日 16時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
ち ゆ。(プロフ) - 最初から最後まで感情が揺さぶられて毎度ページを開く度にドキドキしまくった…(><)ラストの方ほんとにしんどくて心臓きゅってなった(;;)辛いけど綺麗な終わり方しててとても感動しました!素敵な作品をありがとう! (2021年10月30日 12時) (レス) id: 7bb8e59749 (このIDを非表示/違反報告)
ひめ☆そら(プロフ) - ゴリラの末裔さん» お返事遅くなってしまい申し訳ございませんっ!勿体ないお言葉…!!ありがとうございます!!! (2021年10月13日 23時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラの末裔 - 神はここにいた、、、、、 (2021年10月10日 23時) (レス) @page47 id: 566df7a38f (このIDを非表示/違反報告)
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