進めない ページ39
Aside
初めてキスをしたのは、付き合い始めて初めてのクリスマスの時だった。正直、直ぐに手を出してくると思ったのだけれど、佐野は私のことを凄く大切にしてくれた。初めてキスをしたあの日を、私は忘れることはない。
『佐野、どこ行くの？』
「いいからいいからっ！」
十二月二十五日。夜、私は佐野のバブに乗っていた。首元までは防寒着を着ていたため何とか防げたが、顔はどうしても素のままだったため、冷たい風が当たり顔が赤くなる。白い息が宙に消えていく。私は額を佐野の背中に当てながら、まだ知らない目的地へと向かった。
「着いたぞ」
『………綺麗』
「だろ？ここの景色、お前に見せてやりたかった」
バイクを降りて少し長い坂を登った先に、その景色はあった。私たちが住んでいる街が一望できる場所。クリスマスだからか、イルミネーションがキラキラと輝いていて、車や建物の光が耐えない、私たちの街。
『…佐野、ありがっ』
お礼を言おうと視線を佐野に変えた時、佐野の顔が目の前にあって、チュッとリップ音が聞こえた。それは一瞬のことで、目を閉じることが出来なかった。佐野はゆっくりと目を開け、その時初めて目と目が合った。佐野は私を見ると、満足気に笑った。
「顔真っ赤。照れた？」
『て、れてないし』
「A、好きだよ。これからもずっと傍にいて」
・
「お、目ぇ覚ました」
『…龍宮寺？何でここに？』
「お前こそ俺の店の前で倒れててまじで焦った」
目を覚ますと、そこは龍宮寺が経営しているバイク屋だった。どうしてここに居るのか検討がつかない。だって、私は先日佐野と武蔵神社にいたのだ。最後に触れるだけのキスをして、そこからの記憶が無い。
『ねぇ、龍宮寺』
「あ？」
『私、佐野がいないと幸せになれない』
「…俺もそうだ。エマがいないと幸せになれねぇ」
『…』
「でも、前に進まなくちゃならねぇだろ？」そう言うと龍宮寺は私の頭を撫でた。まるで妹をあやす様に。
龍宮寺は凄い。十二年前、エマが死んだその日にすぐチームのために行動した。私は一人エマの所に残ってたっていうのに。あの場所から、エマの前から離れられなかったというのに。龍宮寺は前に進んだ。
(…私も、前に進めたらいいのに)
どうやったら前に進めるのか、私にはその方法が分からない。ただ分かるのは、もう二度と佐野には会えないということだけだ。
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エリザベス女王 - う､､､目から滝が､､､！武道のタイムリープで幸せになってるといいですねぇ､､､✨三途君の恋が､､､あの裏には恋心があったなんて､､､⁈伏線回収上手すぎです‼︎素敵な小説ありがとうございました！ (2022年7月29日 19時) (
レス) @page47 id: c75fcc9307 (このIDを非表示/違反報告)
ひめ☆そら(プロフ) - ち ゆ。さん» ちゆたん…！！こちらこそ読んでくれてありがとう( ᵒ̴̶̷̥́ ⌑ ᵒ̴̶̷̣̥̀ ) (2021年10月30日 16時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
ち ゆ。(プロフ) - 最初から最後まで感情が揺さぶられて毎度ページを開く度にドキドキしまくった…(><)ラストの方ほんとにしんどくて心臓きゅってなった(；；)辛いけど綺麗な終わり方しててとても感動しました！素敵な作品をありがとう！ (2021年10月30日 12時) (レス) id: 7bb8e59749 (このIDを非表示/違反報告)
ひめ☆そら(プロフ) - ゴリラの末裔さん» お返事遅くなってしまい申し訳ございませんっ！勿体ないお言葉…！！ありがとうございます！！！ (2021年10月13日 23時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラの末裔 - 神はここにいた、、、、、 (2021年10月10日 23時) (レス) @page47 id: 566df7a38f (このIDを非表示/違反報告)
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