GrimMaker【浦島坂田船】

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｢何で行かないといけないんですか｣


動揺しきって声が震えてしまう。
戻りたくない、あんな場所。
自ら命を絶とうとした環境に、自ら足を踏み入れる人間が居るものか。


｢どうしても、行かないけんくてさ…｣

｢嫌です、行きたくない。4人でずっとここに居る事がダメなんですか？何であっちに行かないといけないんですか？｣


嫌で嫌で堪らなくて、優しく声を掛けてくれるセンラさんについキツい口調で返してしまう。


｢あんな、俺らみたいな人外と過ごすのには色んな事の上に成り立ってるんよ｣


どうしよう、どうしよう、そう思うばかりで何も答えは出て来ない。
もしも、向こうに戻った時に母親に、父親に見つかったら。

そうしたらどうするのだろう。また私は動けなくなる。両親の顔を思い出すだけでも吐き気がしてくると言うのに会ってしまったらどうなってしまうのだろうか。


｢でも、｣


声が震えてしまう。
眉尻を下げて申し訳なさそうに笑うセンラさんに、無表情でも、心配してくれていることが分かる志麻さんの顔を見て何も言えなくなる。
私がこうして居られるのは彼らのお陰だと言うのに、彼らを困らせてしまう。


｢大丈夫。何かあったら俺らがAの事守るから｣

｢ほんと、？｣

｢ホント。前にセンラとうらさんが助けてくれたやろ？その時みたいに助けたるから｣


な？と優しく笑って頭を撫でてくれる手付きが怖いぐらいに優しくて涙が溢れそうになる。
下唇を噛んでグッと涙が溢れそうになるのを堪えて頷く。


｢行きます。4人が居るんなら｣

｢ほんまに俺らの事大好きやんな｣

｢あ、それは違うんですけど｣


はぁ？と笑いながら志麻さんが言うのに、センラさんが思い切り吹き出す。
彼らが笑うこの光景がずっとずっと続いてくれれば私はそれで良い。
大好きな彼らが幸せそうに笑っていてくれれば、私はそれで十分なのだ。


｢じゃ、今日寝たら着替えをセンラが持って行くから着替えてくれへん？｣

｢分かりました｣

｢ん。ええ子やね｣


ありがとうございます、と言いながら残っているアップルパイにフォークを刺して、口へ運ぶ。
アップルパイは、甘くて頬が溶けてしまいそうだった

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