第7章 喧嘩と愛情と ページ23
目が覚めた時には先ほどまでの瞳を潤ませるAの姿は無くて、代わりに書庫から取ってきたであろう書物を読むセンラの姿があった。
数百年前にも同じ経験をした事があった筈だ。
とある雌の人間の血があまりにも美味だったために、血を吸っていたら、いつの間にか俺の部屋の天井が視界に映っていた。
その時と同じようにAの事も泣かせて、怖い思いをさせたのではないかと考えると居ても立っても居られずに飛び起きる。
「うぉっ!?っくりしたぁ…っておい!!坂田!どこ行くん!?」
起き上がるなり、そのままの勢いで部屋を飛びだ出す。
きっと今センラとまともに話して、Aの所に行くと言ったものならすぐに止められてしまうだろう。
センラの静止の声も完全に無視してだだっ広い廊下を駆けながら、Aの名前を叫び、探し回る。
きっと、俺はアイツを怖がらせてしまった。出会って数時間しか経っていないのに、俺は酷く不安になった。
普通の人間だったら、ここまで心配したり、死にかけの人間をうらさんが見殺しにせずに庇うことなんてないだろう。だが、そうしているのはきっと、Aが当たりであるがためだ。
「Aー!!!返事してやああぁぁぁぁー!!」
俺がいくら叫んでもAは返事をしてくれないし、センラが怒りながら追いかけてくるばかり。
「坂田!落ち着け!止まれって!!」
「嫌や!俺はAと話したい!」
「やぁ〜かぁ〜らぁ〜!!止まれ言うとるやろがぁ!!」
センラの怒声を背に大声で走ると、目の前の扉が勢い良く吹き飛び、耳を劈くような声が響き渡る。
「うるっさいねんお前らぁ!!」
お前が一番煩いわ、と喉まで出掛かった言葉を慌てて飲み込む。
今思った事を言ってしまったら、火に油を注ぐだけだ。
「まーしぃが一番うるせぇよ」
流石はリーダー。平然な顔をして俺らが思っていたことを言ってのける。
「いや、この二人がうるさいやん。Aがビビり上がるやろ」
「やっぱA居るんやな!?Aー!出て来てやー!」
「やから!お前があんな事したから怖がっとんねん!!そんなんやから坂田はいつまで経ってもアホ賢者なんやろが!」
「何やと!?俺は頭ええわ!!」
「うっさいねん!!志麻くんも坂田もキレすぎやわ!!2人共アホやわ!!」
「……うるっせぇ!!テメェら三人ともうるせぇんだよ!」
何故だか四人揃ってぎゃあぎゃと喚き立てていると、俺は絶対に言ってはいけない禁句を口に出してしまった。
「うらさんなら分かってくれるとおもったんに…!うらさんのチビ!!」
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ぴの(プロフ) - いやぁーー!!好きですぅぅぅ(泣)正体不明、天才歌い手シリーズの方も、いつも楽しく読ませていただいています!最新、無理しなくていいですが、密かに待ってます!! (2019年7月14日 15時) (レス) id: c64bb1fc21 (このIDを非表示/違反報告)
トーストぱん(プロフ) - とにかく最高すぎて好きです!!!!! (2019年3月8日 3時) (レス) id: 2929f04cfc (このIDを非表示/違反報告)
トーストぱん(プロフ) - うらたさんとセンラさんがかっこよすぎて過呼吸になりかけましたごちそうさまです!!!フワリと大きな袖で包まれるって…!!!!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙もう呼吸止まった瞬間でしたよええ!!!最高すぎて評価10押したのに既に投票していますって出るんですよ!!!?! (2019年3月8日 3時) (レス) id: 2929f04cfc (このIDを非表示/違反報告)
トーストぱん(プロフ) - 口にする辺りあh((( 流石だなってなったし志麻さん何気に夢主ちゃんのこと、あの、怖がるだろ的なこと言っててア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ってなったしいやもうほんと好きすぎて好きすぎてヤバいです(語彙力低下)続き楽しみにしてますごちそうさまです (2019年1月25日 4時) (レス) id: 2929f04cfc (このIDを非表示/違反報告)
トーストぱん(プロフ) - ア゙ア゙ア゙好きですさかたんが走り回って夢主ちゃん探しに行ってそれ止めようとセンラさん追いかけてその後志麻さん怒ってうらたさんが思ったことハッキリ言う構図が…もう…あの、机に手をめっちゃバンバンするくらい悶えましたごちそうさまですそんでさかたん禁句を (2019年1月25日 4時) (レス) id: 2929f04cfc (このIDを非表示/違反報告)
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