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化け物は人間よりも理性の抑制が乏しく備わっている。
嫌いなやつは殺すし、好きな相手でも出来てしまえば組み敷いてぐちゃぐちゃにしてしまう。
比較的、俺らのような高貴の化け物は理性の抑制も強くなってはいるが、坂田は俺らの中でも弱い方だった。
「涙は色の無い血だって言うだろ?それに、お前の泣いてる顔ってそそるから坂田の歯止めが効かなくなったってわけ。お前の血って酷いくらいに甘い香りすっからな」
「そうだったんですね」
他人事かのように言う彼女をこうさせてしまったのは、彼女が育った環境のせいだろう。
その人間を今すぐ見つけ出して殺してしまいたいと思った俺はやはりどこかおかしくなってしまった。
「当分、坂田の事怖いと思うからお前はここに居ってええからな。俺かセンラが飯も運んで来るから心配すんな」
「あ…えっと、」
「うらたでいい」
「うらたさんは、運んで来ないんですか?」
「は?俺に運べって言うのかよ。俺がそんな面倒なことする訳ねぇだろ。そんなことするんだったらお前の血吸ってるわ」
「あ、遠慮しておきます」
想像通りの反応に些か腹が立ってしまったが、別に怒るほどのことでもないので黙って息を吐く。
もうそろそろ坂田も起きる頃だし、センラに今の状況を伝えておかないと、と思ったときには既に遅かった。
「所で、私の友達は何でここに来たんですか?アイツは周りの人にも両親にも恵まれてた筈なのに…」
「……知らねぇ」
「知らない訳ないでしょう?教えてくださいよ」
「だって、アイツそもそも人間やないもん」
「まーしぃ、何で言うんだよ…」
人間じゃないと言えば人間じゃないし、人間であると言えば人間である。
Aの友人はきっと、他の魔界の奴らが作り上げた、心を持った人形。それがマリオネット。
マリオネットは、人間そっくりに作りだされる、監視役の様なモノ。
それを人間界に送り込んで、ハロウィンの夜に当たりを掻っ攫って魔界に連れ込む筈なのだが。
その説明をするまーしぃの顔をじっと見つめてAは話を聞いていた。
「じゃあ、アイツは人間じゃないんでしょう?人間になりたくて来たんじゃないんですかね…本当の人間になって愛されたかった、とか」
稀にある話だ。
マリオネットがあまりにも人間界に適応しすぎて人間になる事を望む。そんな事叶うはずもないのに、魔力の大きな化け物の元へやって来る。
「人間に……してあげられないんですか」
ポツリと零したその言葉は、優しさに塗れた自分の事を後回しにする人間ならではの言葉だった。
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ぴの(プロフ) - いやぁーー!!好きですぅぅぅ(泣)正体不明、天才歌い手シリーズの方も、いつも楽しく読ませていただいています!最新、無理しなくていいですが、密かに待ってます!! (2019年7月14日 15時) (レス) id: c64bb1fc21 (このIDを非表示/違反報告)
トーストぱん(プロフ) - とにかく最高すぎて好きです!!!!! (2019年3月8日 3時) (レス) id: 2929f04cfc (このIDを非表示/違反報告)
トーストぱん(プロフ) - うらたさんとセンラさんがかっこよすぎて過呼吸になりかけましたごちそうさまです!!!フワリと大きな袖で包まれるって…!!!!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙もう呼吸止まった瞬間でしたよええ!!!最高すぎて評価10押したのに既に投票していますって出るんですよ!!!?! (2019年3月8日 3時) (レス) id: 2929f04cfc (このIDを非表示/違反報告)
トーストぱん(プロフ) - 口にする辺りあh((( 流石だなってなったし志麻さん何気に夢主ちゃんのこと、あの、怖がるだろ的なこと言っててア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ってなったしいやもうほんと好きすぎて好きすぎてヤバいです(語彙力低下)続き楽しみにしてますごちそうさまです (2019年1月25日 4時) (レス) id: 2929f04cfc (このIDを非表示/違反報告)
トーストぱん(プロフ) - ア゙ア゙ア゙好きですさかたんが走り回って夢主ちゃん探しに行ってそれ止めようとセンラさん追いかけてその後志麻さん怒ってうらたさんが思ったことハッキリ言う構図が…もう…あの、机に手をめっちゃバンバンするくらい悶えましたごちそうさまですそんでさかたん禁句を (2019年1月25日 4時) (レス) id: 2929f04cfc (このIDを非表示/違反報告)
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