Memory ページ12
覚と歩く懐かしい街並み。
「Aは中学の時、俺がわざと距離置いたの気づいてた?」
しばらく続いた沈黙を打ち砕いた覚。
「なんとなく気づいたけど、気づかないほうが幸せだから気づいてないふりしてた。」
どうしようもなくもどかしかった中学時代。
「あれはね、俺がAに依存してたから、依存するのやめようって思ってやったんだ。嫌いだったんじゃないんだよ。」
依存。私だって覚に依存してた。
「覚はなんで私がピアス開けたか知ってる?」
知らないと言って私の顔を覗く覚。
「高2の私の誕生日に、覚がイヤリングと間違えてピアス買ってプレゼントしてくれたから。」
「えっ嘘」
俺あれめっちゃイヤリングだと思ってた…と少し顔を赤らめて言う覚。
「今でもつけてるよ。今日もほら。」
耳についた揺れるピアス。先についた硝子の部分が鮮やかで、絢爛としているこの街に似合っていると思う。
「…じゃあ、大学入ってAの部屋か俺の部屋でよくお泊りするようになってから、なんで一切手出さなかったか知ってる?」
私は前を見たまま首を横に振った。
「勇気がなかったから。若利くん達よりもAに嫌われるのがイヤだったから。」
覚は足を止めて、私の方を見て、おもむろに私の頰に触れる。
さっきまでの人通りが嘘のように2人だけの路地。
真っ直ぐ私を見る覚は私の知る覚ではない。2年間の私の知らない覚がいる。
長かった髪の毛は少し短くなって、ワックスでオールバックにしていた頃とは違い大人っぽくなった。少し長い前髪から見える瞳はあまりにも優しかった。
私は目を閉じた。
瞬間、唇に触れるだけのキスが落ちる。
目を開けると覚は妖艶に笑っている。
ああ、こんな覚知らない。
知らないのに、こんなにも愛おしい。
「覚のいない2年間って、どんな時よりも長かった。一緒にいる時間は一瞬なのに、一緒にいない時間は永遠に続くみたいな気分だった。」
涙とともに零れ落ちた2年間の寂しさ。
もっと覚と一緒にいたい。
覚は私の涙を拭い
「あと10ヶ月。」
と言った。
「Aが卒業したら、一緒に住もう。」
耳を疑ったけど、目の前で顔を赤に染める覚を見ると本当に言ったことなんだと思った。
「もちろん。」
今度は私から触れるだけのキス。
最寄駅の居酒屋までの道のりをまた2人手を取って歩いた。
駅の前で待つ長身集団を見つけて、2人で駆けていった。
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上 - 泣かしに来てるよ…天才ですかぁ (2019年3月15日 20時) (レス) id: 9372013e0c (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - めっちゃ感動しました。寝よう寝ようと思ってはいるのにページを捲る手が止まらず… 書き方に雰囲気があってとても好きです (2019年3月12日 5時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
ふじもん(プロフ) - リクエストしたいのですがこれを若様バージョンでお願いします! (2018年9月23日 21時) (レス) id: 9aa2f2467a (このIDを非表示/違反報告)
佐久間 - 長身集団www (2018年8月17日 17時) (レス) id: ea485f4be1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パン田くん | 作成日時:2018年5月21日 23時