十四 ページ14
「来年の春から夏までに江戸に発つ予定だ。」
「そうか...分かった。」
*
盗み聞きだ。
通りすがっただけだったのだが気になって聞いてしまった。
来年の春から夏...
あと4ヶ月程だ。
「...土方、君」
「あ?」
「散歩でも行かない?」
いつも通る道の木の葉も、いまでは1枚たりとも残っていない。
冬だな、と感じる。
「お前から散歩行こうなんざ珍しいな」
「たまにはいいでしょ」
「まぁな...」
「で、どこいくつもりなんだ?」
まずは、夏に花火を見せてくれたところに行こうと思った。
「...野暮用」
なんて、土方君のセリフを使ってみたりした。
彼は覚えてるかな?
「野暮用...?」
覚えてないか、と心の中で突っ込んでは笑った。
こんな当たり前も、あと4ヶ月程でなくなる。
_____いいや、忘れよう。そんな事
「ここ、覚えてる?」
「...花火」
「正解。」
土方君は寂しそうな顔になった。
「A」
「何?」
「俺達...江戸に発つんだ」
「知ってる
ごめん、盗み聞きしちゃって」
「...そうか」
「ごめんね」
「...近藤さんは状況が落ち着いたら江戸に来ても良いって言ってた」
「私が...江戸に?」
「あぁ、状況が落ち着いたらな」
52人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:唐辛子の民 | 作成日時:2018年4月8日 19時