十三 ページ13
それから甘味屋の前を通ると、莉花と終くんが楽しそうにしているのを見かけることが多くなった。
(仲直りしたんだ...)
あの時、随分達者だったと言うか。
私心理学者みたいなこと言ってた...。
微笑ましいカップルだな。なんて思いながら向かっているのは病院。土方君は今日退院なのだ。
「土方君〜?」
「おう」
もうすっかり元気になっていた。
というか元々元気だった?
病院の先生方に見送られて、道場に向かった。
「すっかり寒くなっちゃったね」
「そうだな」
「土方君寒くないの?」
「...少し寒ィ」
私は土方君にマフラーを渡した。
土方君は不思議な顔をしていたが、取り敢えず受け取っていた。
「なんだ?」
「巻いてていいよ、私寒くないから」
「...すまねぇな」
土方君がマフラーを巻くと、少し落ち着いたような顔になった。
暖かそうでよかった。
それから道場に向かい歩いていると、いきなり土方君が言った。
「お前いい香りだな」
「へっ」
「...マフラー」
いきなり不意打ちされて、思わず顔を両手で抑えた。いい香りだなんて...
「私みたいなのに言ってると勘違いされるよ?」
「はぁ?勘違い?」
私は土方君に抱きついて、着流しに顔をうずくめた。
「ど、どうしたんだよ」
「土方君も、いい香りするよ...?」
「っ...」
土方君は耳まで真っ赤にして腕で顔を抑えた。
片方の手では私の頭を撫でた。
「...ね、勘違いされちゃうのわかるでしょ?」
土方君は黙ったままだった。
でも少しすると、私には聞こえない声でゴソゴソと喋り始めた。
「え?」
「だからっ!!かん...ち...ねぇ」
「聞こえない!!」
「だーー!!!もういい!」
土方君は大きな声を出して歩きだした。
「勘違いじゃねーよ...馬鹿野郎」
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作者名:唐辛子の民 | 作成日時:2018年4月8日 19時