十 ページ10
土方side
「Aに何やってんだ...」
何かがプツンと切れたような感覚だった。
Aは意識がなくなりかけている。
「これで、本気で戦えるな...?」
「...あ?」
その瞬間、同時に飛びかかった。
叩いては避けて、脚で蹴る。手で殴る。
簡単だった。
いつも以上に上手くいった。
「お、お前...何者だ...!」
呆気なく負けた相手を見下し、思わず笑いが零れた。
「刀貸せよ...首でも切ってやろーか...?」
腹をジリジリと踏み、相手を苦しめる。
とにかく苦しんだ顔が見たい気分だった。
こいつの部下であろうゴロツキはこいつが負けるとすぐに逃げていった。
すぐ近くで倒れているAに目を向けた。
眠っているようだったが、足から血は出るばかりだった。
「もう1度チャンスをやる...321だ」
「辞めろ...!」
「3」
「辞めてくれ!!」
「2」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「1」
俺は下向きに構えた刀を振り下ろした。
すると、血が吹き出し自分の着流しにかかった。
「A...?」
「やめてあげて...」
俺が振り下ろしたはずの刀はAの手に掴まれていた。Aの手からは血が溢れ出していた。
「なんで...お前、こいつに切られたんだぞ...?」
「だからって人を殺しちゃいけない」
「俺はお前のために...!」
パシッ
音を立て、Aは俺の頬を叩いた。
「私の為なんかじゃない、いい加減にして」
Aの目は俺の目を真剣に見つめた。
真っ直ぐな目をして。
「この人は私と土方君を殺そうとした。貴方もこの人を殺そうとした。」
「...」
「おあいこ様」
男は気絶したままだ。
俺はAに言われた言葉を脳内で何度も繰り返した。
___俺は間違ってたのか...?
確かに、Aが好まねぇやり方だろう。
あいつは、人の命の重みを十分に理解してる。
だからこそいくら悪い奴でも殺す事は許さねぇ、と。
「...近藤さんには」
「内緒...の前に...足もうやばい」
「おぶってやるから我慢してくれ」
*
「運がなさ過ぎる」
「あぁ、本当にその通りだ」
私達は自分達では治療できないと思い病院に来た。
_______
「土方十四郎さん、Aさん。入院です」
「「は?」」
「いや、は?も何も土方さんは3ヶ所骨折してますし、Aさんは手術も必要な可能性があります...」
「まじか」
「近藤さんにバレる」
__________
「トォォォォシィィィィ!!!Aちゃぁぁぁぁん」
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作者名:唐辛子の民 | 作成日時:2018年4月8日 19時