甘い空気は匂いの所為 ページ2
黒い空には無数の星々が頼りない明るさで瞬いている。
街灯も少なく、やはり明かりとしては心許ない。
商店街近くのこの公園は、この辺りでは一番大きなもので、広場や雑木林、小さい子向けの遊具がある場所などの様々なエリアがあり、中高生の格好のデートスポットとなっている。
たくさんの樹木が両側に立ち並ぶそんな道を今、私は影片くんと歩いている。
まさか自分がそういう理由でここを利用することになるとは思っていなかった。
会話はなく、二人分の足音と風の音しか聞こえない。
影片くんと一緒にいる時に、会話がなかったことなんて今までない。
(影片くんも緊張してるのかな)
それでも右手からは影片くんの体温が伝わってくる。
まだ恥ずかしくて、お互い顔を見ることができない。
…とは言え、さっき家の前で抱き合ってたことに気づいた瞬間よりはマシだ。
道には誰もいなかったけど…お母さんに見られたかな…
「…Aちゃん」
影片くんが話しかけてきた。顔は前に向けたままだ。
「なに?」
「おれ、あんまり詳しくないんやけど、ここって屋台出てたりするん?」
屋台…?
(…あっ)
何で影片くんがそんなことを聞いたのかすぐにわかった。
どこからともなく美味しそうな匂いがする。
甘いような香ばしいような…ソースの香りかな?
「私も知らないけど、あっちの方からかな?行ってみよっか。」
いい匂いの正体はたこ焼きの屋台だった。
「「美味しそう…」」
言葉は完全に同時だった。
思わず二人で顔を見合わせる。
そういえばずいぶん長いこと視線を逸らしていた。
影片くんはきょとんとした顔をしていて、たぶん私も同じ顔をしているんだろう。
そう思って笑いがこらえ切れずに吹き出すと、影片くんもこれまた同時に吹き出した。
二人で声を出して笑い合っていると、そのうちにたこ焼き屋のおじさんが私達に気づいて声をかけてきた。
「おーい!そこのアベックおいで!店じまいするから安く売ったげるよ!」
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milena(プロフ) - カムイさん» コメありがとうございます!お褒めの言葉嬉しいです!これからも可愛いみかちゃんの話を思いつきましたらこちらに書くつもりですので是非また読んでくださいね。 (2017年7月1日 23時) (レス) id: ec31ce329b (このIDを非表示/違反報告)
カムイ - メチャ面白かったです!みかちゃん可愛かったです〜♪みかちゃんすごい好きなんですけどもっと好きになりました!こんなに素晴らしいお話を考えられるってすごいと思います! (2017年7月1日 11時) (レス) id: 93936313e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:milena | 作成日時:2017年3月16日 20時