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「んじゃ、行ってきます」
ライブ当日、雨の降る中俺は2人の母親に見送られながら実家を出た。
昨日の夜、なんだかわからないけど気付いたら実家に向かっていて俺の母ちゃんとAのお母さんはいきなり現れた俺に目を丸くしていた。
父ちゃん'sと酒を飲んでから久しぶりに俺の部屋で寝た。
きっとライブ前日で、心のどこかで不安を感じてたのかも知れない。
Aのいないあの家は1人には大きすぎる。
どこにも彼女との思い出があって落ち着かないっていうのもあった。
だから無意識にここに足を運んだんだと思う。
やっぱ家族って、一番安心するから。
雨の降る昼間のこの道は、俺とAが使っていた通学路。
地元だからこそ残ってる、俺と彼女の甘酸っぱい青春の思い出の数々。
そして、その思い出の場所として外せないと思い足を運んだ場所は、俺たちの通っていた高校。
幸い今日は休日で、しかも雨だから外で部活をやってる生徒達は居なくてすんなり中に入れた。
一応挨拶をと思い、職員室へ向かうと懐かしい先生たちが俺のことを歓迎してくれる。
「元気にしてるか？」「今や大スターだなっ！」「わが校の誇りだ！」とか言いながら笑顔で話しかけてくれる先生たちはあの時より少し老けてたけど、変わりない様で安心した。
職員室を出て、次に俺が向かったのは俺たちの約束の場所。
実際約束なんて1回もしてない、自然と集まってた場所だけどね。
校舎の最上階、一番端っこにある第2音楽室。
階段を一段ずつ上がり、そこに着いた時には少し息が上がってて「歳とったな」と実感する。
ガラｯと扉を開けると、当時とは違いそこは物置になっていた。
「時間って … やっぱり動いてんだな … 」
埃っぽい教室に入り、中を見渡す。
「 … あれ、誰か使ってんのか」
物置にあるには綺麗すぎるグランドピアノ。
一つ音を出してみても調律が合っていた。
「ここに来るやつは … ただもんじゃないね、きっと」
音楽の好きなサボり魔か … ？
椅子に腰掛けて鍵盤を左手の指で撫でる。
「A … 戻ってきたよ、ここに」
喧嘩した時俺が物を隠したのも、2人で将来の夢を語り合って泣いたのも、プロポーズしたのも、全てここだった。
「始まりは全部ここだったんだ」
ぽーんと鍵盤を優しく弾き、ふぅと息を吐く。
外の雨の音を消し去るように俺は歌った。
あの歌を。
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夜天(プロフ) - 玲さん» コメントありがとうございます！こちらこそ、虹きみを読んで頂きありがとうございました！ (2020年1月6日 19時) (
レス) id: e2489fa5d7 (このIDを非表示/違反報告)
夜天(プロフ) - meiさん» コメントありがとうございます！顔面をそんなにして頂いたなんて…ありがとうございます！ (2020年1月6日 19時) (レス) id: e2489fa5d7 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - 久しぶりに沢山泣きました。こんな感動する小説を書いてくださりありがとうございました (2019年12月14日 4時) (レス) id: cd190f001a (このIDを非表示/違反報告)
mei(プロフ) - 泣きすぎて顔面とんでもないことになってしまいましたw感動しました！ありがとうございました！ (2019年11月25日 15時) (レス) id: fd406e97dc (このIDを非表示/違反報告)
夜天(プロフ) - PEANUTSさん» コメントありがとうございます！その言葉が何よりの励みです！ありがとうございます (2019年5月29日 18時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜天 | 作成日時：2019年5月19日 22時
