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玲於に会うのに、こんなドキドキするのなんて始めてだ。
音楽聴いてるのに、昨日のことの言葉が耳について離れなくて入ってこない。
この通学通勤ラッシュの電車の中、きっと私だけ世界が違う。
次は玲於の最寄り駅のアナウンスが流れる。
やめて、この車両に乗ってこないで … っ!
目をぎゅっと瞑って心の中で叫ぶ。
「おはよう」
聞こえてきた声が玲於じゃない …
パッ目を開けて声の主を確認すると、片寄先輩が私の目の前に立っていた。
『片寄先輩!?』
「シーッ、声がでかい」
口の前で人差し指を立てる動作がすでに爽やかで、うちの学校の子だけじゃなくて他の学校の子も先輩を見てる。
「あれ、もしかしてお目当ての人は僕じゃなかったかな?」
『え、なんで … 』
「ほらやっぱり。あ、彼氏とか?」
『違います!あいつはそんなんじゃ … っ』
そんなんじゃないって否定しようとしたのに声に出なかった。
玲於を彼氏じゃないって、否定しようとすればするほどぎゅっと締め付けられるみたいで苦しい。
隣の空いた席に先輩は座り、「そかそか」となんか納得し始めた。
「Aさんは、その人のことが否定できないほど好きなんだ」
『 … そうなのかもしれない、です』
でも、付き合いたいとかそんな気持ちで「好き」って言ってるんじゃない。
玲於は私の親友だって勝手に思ってる。
その関係を、壊したくない。
『玲於を、玲於として見れなくなるのが嫌で … っ』
親友の佐野玲於であって、恋人の佐野玲於は嫌だ。
「随分ワガママな言い分だね、それ」
『ですよね … こんなの玲於を傷付ける … 』
泣きそう、こんな朝から電車の中で。
鼻を啜って涙を堪えようとした時、先輩が私の中を抱き寄せて肩が密着する。
『せん、ぱ … 』
「そのワガママ、嫌いじゃないよ僕は」
顔を上げても先輩は真っ直ぐ前を見たままで、私のことを見ようとしない。
「泣きたければ泣けばいい。その玲於くんの前で泣かないように」
我慢なんてできるようなもんじゃなかった。
流れてく大粒の涙が、肩を貸してくれた先輩のブレザーに濃い染みを作ってく。
無意識に先輩のブレザーを握りしめてた手は、いつの間にか彼の指の綺麗な手に覆われていた。
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夜天(プロフ) - 美心さん» 亜嵐くんの誕生日ですか!?羨ましい(泣)移行先でもよろしくお願いします! (2018年11月10日 9時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
美心(プロフ) - 私は8月4日に参戦して来ました!更新頑張ってください! (2018年11月9日 22時) (レス) id: 3a297c68b9 (このIDを非表示/違反報告)
夜天(プロフ) - 佐野玲於の名無しのfanさん» ありがとうございます!まだまだ最後を迎えるのは先なので最後までどうかお付き合いください! (2018年10月16日 7時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
佐野玲於の名無しのfan(プロフ) - オチが気になる〜!!読み終わったとき心臓がキュンキュンします!続き頑張ってください! (2018年10月16日 0時) (レス) id: 24c1463825 (このIDを非表示/違反報告)
夜天(プロフ) - あゆんさん» ありがとうございます!これからもきゅうってさせちゃいます!! (2018年9月30日 6時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜天 | 作成日時:2018年9月10日 23時