赤井さんの想い人は工藤新一の双子の姉【迷宮の十字路】

１５話 ページ15

和葉「知り合いなん？平次」


驚いた和葉がたずねると、平次は「ああ、ちょっとな」と答えた

詳しく語ろうとしない服部に、和葉の表情が曇る

あぁ……と顔を手で覆って嘆く小五郎に、蘭とAは「『もぉ!ちょっと目を離すとこれなんだから!』」と頬をふくらませた

すると、竜円が「蘭さんとAさん」と声をかける


竜円「お父さんを叱らんといてあげてください。お誘いしたんは私らなんですから」


桜「そうや。名探偵に＜源氏蛍＞の事件、推理してもらお思てな」


『(まぁ、私はお父さんじゃないけどね)』


桜正造の言葉に、そばにいた女将が「＜源氏蛍＞というたら……」と口を開いた


女将「メンバーは皆《義経記》を持ってはるそうどすなぁ」


桜「わしも持ってるがな。あれはええ本やで、なぁ古本屋」


と桜正造が目を向けると、西条は「ええ……」と苦笑いをした


西条「けど、僕はあまり好きやありまへん……《義経記》いうても、実際は弁慶の活躍を描いた''弁慶記"ですから」


水尾「私は好きやで？特に《安宅》の弁慶、最高や」


西条とは異なる意見を述べる水尾に、園子は「《あたか》って何ですか？」とたずねた。


水尾「能の出し物のひとつや。頼朝の追っ手から逃れる途中、義経と家来たちは山伏に変装して、安宅の関所を抜けようとするんやけど……」


水尾が説明すると、酒を飲んでいた桜正造が引き継ぐように口を開いた


桜「変装を義経だけが見破られそうになってな、弁慶はとっさに金剛杖で義経を叩いたんや」


園子「え？どうして？」


桜「関所の番人を欺くためや。まさか家来が主君を杖で打つなんて考えられへんやろ？」


園子の問いに桜が答えると、今度は水尾が引き継いだ


水尾「それで義経一行は無事、関所を通過できたんや。後で弁慶は涙ながらに義経に謝るが、逆に義経は弁慶の機転をほめる。二人の絆の深さがわかるええ話やな」


水尾の言葉に、隣の西条が小さくうなずく。すると、桜正造が「ああ、えらいすまんけど」と女将に声をかけた


桜「ここんとこ寝不足でな、下の部屋でしばらく休ましてもろてもええやろか？」


女将「それやったら、今晩は他にお客さんいたはらへんし、隣の部屋で……」


桜「いや、下の方が落ち着いてええんや。そやな」


桜正造は腕時計を見た＿＿＿八時十五分

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