ビターシンドローム

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Fside


「ミツおてて冷たいねー」


楽屋で北山からリモコンを受け取った玉が、そのまま北山の手を掴んでそう言った。

多分この口調はちょっとバカにしてる。


バカにされてると分かってない北山は、楽屋でもずっと毛布の中。

今のところ眠ってはないが、寝てしまいそうだ。

しかし…昼寝をされると、また起こされた時に機嫌が悪くなるからやめてほしいところ。


「さみーんだよ。まああれだな、手が冷たい人は心があったけえんだよ」

「どーだか」


そんな会話を聞いて、渉がホットコーヒーを、ニカがポッケに入れていたカイロを北山に渡した。

ついにはとしくんが、北山の体をふざけながらだが摩り出した。


「みんな助かるわーお前らは優しーなー」


と言いながら、俺の方をジッと見てきた。

「は」ってなんだよ、「は」って。


・


「一人で暮らしの時、どうやって起きてたの？」

二人共仕事が早く終わり、鍋を一緒に囲みながらふと問いかけた。


「アラーム」

「はい？じゃあ今もアラームで起きなよ」

「やだねー」

「あのねぇ、どれだけ手間だと思ってるの」

「だってさみいんだもん。起きれない」

「それは一人で住んでた時も一緒でしょうが」

「あー藤ヶ谷は朝も夜もうるさいなぁ。そんなこと言わずに、もっと優しく起こしてくれよ」

「おまえさぁ…」


鍋の肉をうまいうまいと食べて、上機嫌でそんなことを言ってくることにまた腹立つ。

どうせ寝て起きたらまた機嫌悪いくせに。

俺が引っ張って起こして、洗面所まで連れてって、パン焼いてあげなきゃいけないくせに。これ以上優しくしろと？


・


「優しくって言ったんだ！甘くとか言ってねえ！！」


…翌朝、俺は北山をキスで起こしてあげた。


北山は、顔を真っ赤にしてすぐ目を覚ましてきた。


北山は自分でパンを焼き、なんなら目玉焼きも焼いて上に乗せて、プンスカしながら頬張っていた。

機嫌が良さそうだった。



END 2022/11/21

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