35.「まじですかぁ……」 ページ36
何となく嫌な予感がした私は、ピクリとも動かないカラ松さんの口角を親指で押し上げた。やっぱり無い。間違いなく、前はここに鋭い牙が生えていたのに。
待って待って。全然意味がわからないけど、とりあえずこの人を起こそう。今この瞬間、何が一体どうなっているのか、私は全く知らないのだ。
「カラ松さん！ おーい！」
さっきまで出かかっていた涙はどこへやら。
「かーらーまーつーさーん！」
「……」
「起きろ！」
「ぐはっ！」
スヤスヤと心地好さそうに眠る彼がようやく目を覚ましたのは、少し強めにオデコを殴った後だった。よほど痛かったのだろうか、額をさすりながら「なんなんだハニー……」と情けない涙声を漏らす。
まあとりあえず元気そうでなによりだ。
──じゃなくてっっ！！
私は追い討ちをかけるように、更にカラ松さんの頬を両手で引っ張った。
「な、ん、で！ 牙が無いんですか！？ それに羽も！！」
「いひらりろうしたんら？」
「何を言っているのか分かりません」
「らって、はにーらひっはるはら！」
とにかく手を離してくれ！ と目で強く訴えかけられた私は言う通りにする。そして突然何を改まったのか、カラ松さんはゲフンとわざとらしく意気込みながら、その場に座り直した。いきなりそんなことをされたら私もつられて正座してしまうわけで。
青い花に囲まれ、２人だけの世界。
風の音さえしない静寂を打ち破ったのは、カラ松さんの方だった。
「……単刀直入に言うと」
「はい」
「オレはな」
「はい」
「……え〜っと」
「はい」
「その、だな」
「はい」
「まあ何というか」
「まどろっこしい！！」
「ひぃっ、すみません……」
いいから早く言ってください、そう促せば、今にも消え入りそうな声で、何度目かの「よし」と呟いた。
「ハニー、オレは“人間”になったんだ」
「……え」
カラ松さんが人間になった？ それは、いわゆる吸血鬼ジョークとかいう笑えないやつじゃないよね、てかカラ松さんすごい真顔だマジのやつだ。本気で言ってるんだ。本気のやつだ。
一通り脳内でリアクションが巡り巡った私は(その間わずか２秒)、何を言うでもなく、ただただ大きな溜め息を吐いた。それは長くて重い重い溜め息を。
「はぁ〜〜〜〜……まじですかぁ……」
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暇人(プロフ) - 泣いた (2018年8月12日 0時) (
レス) id: adf691658b (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - 結婚してほしい主人公とカラ松くん! (2018年4月9日 15時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
衿川紗倉 - わああ！最高です！面白かったです！！おまけの更新頑張ってくださいね！ (2018年4月5日 11時) (レス) id: b3d6cd4611 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖@ラビが大好きリーフパイ(プロフ) - わー！！完結おめでとうございます！！カラ松最高にかっこよかったです！おまけの更新、頑張ってくださいっ！！ (2018年3月19日 6時) (レス) id: 942887e5ad (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - タナトさん» コメントありがとうございます！そこまで感情移入していただけるとは光栄です！これからも頑張ります！ (2018年3月19日 1時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオト
| 作成日時：2016年12月18日 1時
