22.「何も話せないよね」 ページ23
あと数センチ。
伸ばした手が扉に触れようとした刹那、ガクンと全身に重みがのしかかってきて、私の足はその場で停止した。
……なにこれ。
まるで氷のように固くなる体。
かろうじて動かすことができるのは思考回路のみ。
まさか、これが本当の一松さんの能力？
あまりの非常事態になす術がなく、最早笑いまでこみ上げてくる始末だ。いや、表情も固まってるから実際口角なんて上がらないけど。
窮地に立たされた人間はおかしくなるのか、なんて他人事のように考えていると、ふと背後に人がいるような気がした。
「──こんなところでなにやってるの？」
これは、初めて耳にする声質だ。
一松さんのような低い妖艶な声色とは逆に、高く明瞭なそれは、トド松さんや十四松さんのように、私に和親感を抱かせた。
もしかしたら、この人なら助けてくれるかもしれない。
しかし今の私は、人形の如く動けなくなってしまったため、後ろを振り向くどころか、声すら出せない状況だ。まともに考えて、助けを乞う手段は皆無。
すると、彼は続けて口を開く。
「ああごめん、これじゃ何も話せないよね」
そう彼が言い放った瞬間、プツリと何か糸のようなものが切れる音がして、それと同時に今まで私の全身を包んでいた重力が嘘のように消え去った。
不意打ちで軽くなった体を、私はすぐに半回転させる。その直後に背筋がゾクリと震えたのは、きっと彼を視認したからだと思う。
一目見てわかった。
彼が三男の、チョロ松さんだと。
「君、拘束具は？」
私は自分の手足を見た。
先ほどまで枷がついていたそこらには、僅かだが跡が残っている。
「……一松さんが外してくれました」
「はぁぁ……勝手に何やってんだアイツ」
と、少し苛立ったように頭をかくチョロ松さん。
この様子から察してしまったのは、彼が味方になってくれる確率はゼロだということだ。
私をこの屋敷に連れて来て、そして趣味の悪い束縛を施したのは恐らく一松さんとチョロ松さんの２人。
最悪だ。確実に詰んでるよコレ。
「あの。逃すつもりは、微塵もありませんか」
ダメ元だけど、確認。
「さぁ、生きて帰れるかどうかは君次第だね」
そもそも彼らの目的はなんなのか。私を殺すつもりなら、生け捕りなんて面倒なことはしないハズ。
警戒心でいっぱいいっぱいの私を煽るように、チョロ松さんはニヒルに嘲笑った。
やっぱり、吸血鬼は嫌いだ。
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暇人(プロフ) - 泣いた (2018年8月12日 0時) (
レス) id: adf691658b (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - 結婚してほしい主人公とカラ松くん! (2018年4月9日 15時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
衿川紗倉 - わああ！最高です！面白かったです！！おまけの更新頑張ってくださいね！ (2018年4月5日 11時) (レス) id: b3d6cd4611 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖@ラビが大好きリーフパイ(プロフ) - わー！！完結おめでとうございます！！カラ松最高にかっこよかったです！おまけの更新、頑張ってくださいっ！！ (2018年3月19日 6時) (レス) id: 942887e5ad (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - タナトさん» コメントありがとうございます！そこまで感情移入していただけるとは光栄です！これからも頑張ります！ (2018年3月19日 1時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオト
| 作成日時：2016年12月18日 1時
