20.「クソ松のお気に入り」 ページ21
誰かがいる──。
それも多分、人間ではない。
普段は感じることのない嫌な緊張感が空気を伝い、私の体をまるまると包み込んだ。一言でも発したら、なにかが終わってしまうような静寂の中、自分の心拍音だけがうるさく鳴っていた。
私は、声のした方向をじっと見つめる。
部屋の隅、月の光も届かないそこは影で。
……私は顔が強張るのを感じた。
ゆっくりと、ゆっくりとその影が少しずつ私に近づいていたのだ。そして、それはやがて人のカタチを成していき、最後は──、
「初めまして、クソ松のお気に入り」
紫の瞳を持った、カラ松さん似の青年へ変わった。
すぐに把握する。彼はカラ松さんの“兄弟”だと。
けれど十四松さんでもトド松さんでもない、つまり、気をつけたほうがいいと言われていた、マズイ方の兄弟だ。
なんてことだろう。あんなに散々、注意しろと言われていたのに。どうして私は捕まってしまったんだ。
目が覚めたら知らない場所にいて、目の前には要注意人物がいて。焦らないわけがない。ここに私はどうやって来たのかもわからないし、わざわざ拘束する理由も不明。
「あー、わけわかんないって顔だね」
「……こ、ここはどこですか」
「おれ達六つ子の家」
ということは私は今、赤塚山の麓(ふもと)にいる。よかった、私の家から近い。いや全然よくないや。
「アンタ、名前は」
不意に言われて驚いたものの、私は冷静を装って(本当は内心大パニックで)「Aです」とだけ告げた。
「ふーん」
「アナタは？」
「一松」
──チョロ松と、一松のことか。
以前、そうカラ松さんが言ってた名前だ。
彼は四男。それに、さっきの不思議な動きをする影を見るに……あくまで私の憶測でしかないが、彼の能力は“影に溶け込む”というものでは？
ふぅ、と息を吐いた。ずっと浅い呼吸を続けてたせいか、やけに体が重くしんどい。
お願いだから、家に帰して。
そう懇願して、彼がすんなりと受け入れるハズがなく。悪びれる様子もなく誘拐をするような人なんだから、無闇に喋って気に触るようなマネだけはしたくない。
何をされるか考えただけで寒気がする。
つまり、頼み込む、という選択肢は消えた。
ということで私に残された選択肢は二つ。
このまま大人しく恐怖に耐え続けるか、
彼に気づかれないよう脱出するか、だ。
21.「頑張って逃げてね。おれ達から」→←19.「……なんですか？」
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暇人(プロフ) - 泣いた (2018年8月12日 0時) (
レス) id: adf691658b (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - 結婚してほしい主人公とカラ松くん! (2018年4月9日 15時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
衿川紗倉 - わああ！最高です！面白かったです！！おまけの更新頑張ってくださいね！ (2018年4月5日 11時) (レス) id: b3d6cd4611 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖@ラビが大好きリーフパイ(プロフ) - わー！！完結おめでとうございます！！カラ松最高にかっこよかったです！おまけの更新、頑張ってくださいっ！！ (2018年3月19日 6時) (レス) id: 942887e5ad (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - タナトさん» コメントありがとうございます！そこまで感情移入していただけるとは光栄です！これからも頑張ります！ (2018年3月19日 1時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオト
| 作成日時：2016年12月18日 1時
