02.「名前を教えてくれないか?」 ページ3
バクバクとうるさく鳴り響く鼓動。
空気が喉に引っかかって、上手く呼吸ができない。
「どうかしたか? ハニー?」
「は、ハニー……? 私のこと?」
「ハニー以外に誰がいるんだ?」
何この人めちゃくちゃ怖い!
当たり前みたいな感じで私のことをハニーって呼んでるけど、初対面だよね? 初めましてだよね? これって私もダーリンって呼ばなきゃいけないルールなの?
……い、いやいや。おかしいよ。
「あ、あの、誰ですか」
露骨に警戒心をむき出しにして問いただせば、彼は一瞬きょとんとして、また妖しげに口角を釣り上げた。
「ああ、すまない。君に出会えた嬉しさでつい早とちりしてしまったようだ。自己紹介がまだだったな。オレはカラ松。見ての通り吸血鬼だ!」
「はあ……」
と、私は微妙なリアクションをとる。とりあえず名前はわかった。カラ松さんね。洋風な恰好のわりに古風な名前をしてるなあ。
そんな呑気に考えたのは、たったの数秒で。
──吸血鬼!?
時間差でとんでもない衝撃波がやってきた。
まさか、とは思ったが、カラ松さんの口からチラリと覗き見える尖った犬歯、先ほどから違和感全開でそこにあるコウモリのような羽……ただの仮装と言われてしまえばそれまでだが、私にはどうしてもそれが偽物とは思えなかった。実際飛んでるし。
「本物の吸血鬼?」
「オフコース! 結婚する気になってくれたか?」
「それは全然ないです」
「ん〜? さてはツンデレというやつだな?」
「なにこのポジティブ吸血鬼……面倒臭そう」
「なに、怯えることはないさ。この先どんな危険が君の身に降りかかっても、オレが命をかけて守り抜くとここに誓おう」
「えぇ……出会って早々重すぎでしょ……」
これはとんでもない生き物に魅入られてしまったぞ。ていうか下校中に吸血鬼にプロポーズされるってなに!? どういうシチュエーション!?
「それより、どうして私なんですか!」
「君を一目見た瞬間、ビビビッと心臓が震えたんだ。例えるならそうだな……まるで聖なる女神と口付けを交わした、とでも言うべきだろうか」
「サイコパスだ……!」
「そんなことより、ハニーの名前を教えてくれないか?」
よくも名前も知らない小娘に堂々とプロポーズできたな。果たして教えるべきか教えないべきか。でも見た所カラ松さん悪い人じゃなさそうだし。
な、名前くらいいいかな?
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暇人(プロフ) - 泣いた (2018年8月12日 0時) (レス) id: adf691658b (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - 結婚してほしい主人公とカラ松くん! (2018年4月9日 15時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
衿川紗倉 - わああ!最高です!面白かったです!!おまけの更新頑張ってくださいね! (2018年4月5日 11時) (レス) id: b3d6cd4611 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖@ラビが大好きリーフパイ(プロフ) - わー!!完結おめでとうございます!!カラ松最高にかっこよかったです!おまけの更新、頑張ってくださいっ!! (2018年3月19日 6時) (レス) id: 942887e5ad (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - タナトさん» コメントありがとうございます!そこまで感情移入していただけるとは光栄です!これからも頑張ります! (2018年3月19日 1時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオト | 作成日時:2016年12月18日 1時