戦国書簡

軟膏（戦国BASARA　島左近） ページ23

寒さが厳しい寒風の候―

針を片手に黙々と手を動かす私は、島左近様の副官。
まぁ、副官と言っても名ばかりで、戦場で戦う以外の仕事は多岐に渡っている。
書状の整理や代筆をはじめ、左近様の予定の管理、食事の支度に繕い物まで様々だ。
それで、この前の戦で左近様が破いた着物を、今、私が繕っている訳だ。
っと…ようやく出来たぁ。
左近様に仕えるようになってから、格段に家事の技能は磨かれている…少し微妙な気もしなくもないけど。

「さてと、左近様に渡して、夕餉の支度しなくちゃ。」

丁寧に畳んだ着物を持って左近様の居室に向かって歩いていると、運よく本人がやってきた。

「お、A！」

「左近様、丁度良かったです。預かっていた着物、繕えましたので、お渡ししておきますね。」

「お〜！いつもあんがとな。マジで助かるよ。」

「それでは、夕餉の支度がありますので、失礼します。」

軽く頭を下げ、左近様の横を通り過ぎようとすると、左近様に手を掴まれた。

「…？」

「ちょっとこっち来て。」

手を引かれるまま連れて行かれたのは、左近様の居室だ。
そして、部屋に着くと私に座るように促し、左近様は何かを探して、ガサゴソと葛籠の中を探り始めた。

「うっし。あった！」

少しして目当ての物を見つけたらしく、左近様は私の前に座り、右手を差し出してきた。
…おて、なのかな？犬になった覚えはないけど…。
何も行動しない私に痺れを切らしたのか、左近様は私の右手を半ば強引に奪っていった。
そして、何かヌルリとしたものが塗り付けられ、刷り込まれた。
少しこそばゆいし、微妙に恥ずかしい…。

「もう片っぽも貸してくんない？」

「…はい。」

半ば諦めの境地で、左手も差し出す。
あれ…？戻ってきた右手は、少ししっとりしてる？それに、花みたいな匂いがするような？

「いっちょ上がり！」

私がマジマジと右手を見つめている間に、右手と同じような状態で左手も戻ってきた。

「えっと…これは？」

「いやぁ〜いっつも頑張ってくれてるAにご褒美！…みたいな？ 手、荒れてるみたいだったし。」

そう言いながら、左近様が見せてくれたのは、軟膏の入った壷だった。
確かに寒くなってきて、ヒビ、あかぎれが酷かったんだよ。
まさか、気づいていただいているとは…！

「ありがとうございます！」

私が心からのお礼を述べると、左近様も満面の笑みで返してくれた。
左近様の副官で良かったって思う瞬間、ここにあり！
…なんてね。

書き損じ書簡→←戦に負け、怪我を負ってしまった（戦国無双）＊HANABI。様リクエスト

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