く さ れ え ん 2 【 S o u 】

腐れ縁 6 ページ7

"離れていかないで"


小学生の頃から何度も聞いたセリフ。


返事をしなくても、わかってるでしょ。そんなの。


『そーいえば、爽って泣き虫だったよね！』

ブランコに座りながら、話を逸らすため思い出したように言えば、


「い、いや、Aが男勝りだったんだよ！！」

と恥ずかしそうに言い、同じように隣のブランコに座った。


そうだ。小学5年生の夏。
2人でお留守番をしてた時、雷が鳴っていた。

雷を怖がって、目に涙を浮かべながら
きゅ、と私の服の袖を引っ張って
"離れていかないで"
と言ったんだ。

『あの時の爽、可愛かったなぁ』


「今も、Aの方が可愛いよ」


なんて、笑顔でサラッと言ってくる。

恥ずかしくなって、軽くブランコを漕ぐ。

きーこー きーこー と、さびた鉄が揺れる。


「よし、そろそろ帰ろっか」

先にブランコから降りて、おいでと手を広げてくる。


私は、勢いをつけて思いっきり飛んだ。

そして、爽は私を優しく受け止めた。



昔から、ブランコに乗った時はこうしていた。

今のように受け止めてくれていた。

もちろん、中学の時も。


無意識に背中に回す手に力が入る。

「ふふ、A、コアラみたいだね」

と爽は笑いながら言った。


『だね…。爽の背中…安心する。木みたいだ』

と言うと、

「木？！」

と目を丸くした爽。


それから優しく微笑んで、

「そっかぁ…。Aは俺のことそんなに大切にしてくれてるんだぁ。愛されてるなぁ」

ひとりごとのように言った。


とても嬉しそうに言うから、何も言えなかった。



(私も充分大切にしてもらってるよ。たくさんの愛をもらってるよ)

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