歪んだ愛でもいいじゃない

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「コーイチさんタカシさん。本当に申し訳ありません。加湿器を忘れてしまいました。同じものが手配出来ませんでした。本当に申し訳ありません」

「ええよええよ、人間誰でも失敗はあるしな！うん、加湿器ある訳やし！大丈夫やで！」


苦しかった…タカシさんにまで気を遣わせて…
情けなかった………優しさが痛かった


「……次は忘れんなよ」

そう言ってコーイチさんは何処かへ行ってしまった。

コンサート前にこんなことでメンバーの方にストレスをかけるなんて、まだマネージャーのたまごだとしても失格だ。有り得ない。


メンバーの皆さんは私を見かける度に、加湿器を忘れたことを風の噂で聞いたのか、明るく話しかけてくれたり、笑わせてくれようとした。


でもその日涼さんとは一切話しをすることも、目が合うこともなかった。

尊敬している涼さん。

私に期待を寄せてくれた涼さん。

信頼してくれた涼さん。


全てを一瞬でぶち壊した。





コンサートが終わり、部屋に戻ってからこれでもかと泣いた。

途中スタッフの仲間がご飯に誘ってくれたが、行ける状態ではなく、断った。


どれだけ経っても涙は止まらなかった。




「Aちゃん？私。椿だけど…良かったら開けてくれない？」


椿さん……ヘアメイクの方で、涼さんの彼女さんでもある人だ。


椿さんがとても優しいのは知っていた。
我儘だけど、今はその優しさに少しすがりたかった。

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