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第三十二話 嫐 ページ34

利き足で踏み切り、狭い室内を跳び回る。
育て上げた神速を活かし、相手を翻弄する。


――目を回してフラフラの人形になった時には、
もう、私の玩具(てのなか)だ。


ゆっくりゆっくり時間をかけて嬲る。

彼は視線をせわしく私に合わせて動かすが、
そこから一歩も動こうとしない。


――もう少し、嬲ろう。


ただ殺めるのはつまらない。
何と言っても、“太宰さん”を殺めるのだから。


――自慢(おのぞみとおり)の、短刀で。


“からかって”やろう、とワザと相手に近づいてみたり、
速度を緩めたりする。

遂に、正面からの“首を狙うふり”を仕掛けようと考え、
彼の背後に回り込む。

そこから高く飛びあがり、彼の正面に踵から着地し、
素早く身を翻して相手の首、を“見ながら”脇を通――



「――ッ!??」


グン、と襟首を掴まれ、後ろに引っ張られる。
突然のことに体が止まれず、喉が絞まる。


「うん、“私の知っている”Aちゃんだ」


にっこり、と微笑む姿は変わらず、
相も変わらず世の女性を虜にするだろう。


「矢張り、凶器は口づけだったんだね。
 Aちゃん、私の唇を物欲しそうに見つめるんだもの。
 厭でも確信を持つよ」


襟首を離し、
視線も気持ちも隠さないと、と笑って諭す彼。


――せめて、驚いている顔が見たい。


“福沢さん”にやったように手を彼の頭の後ろに伸ばし、
ぐッと近づけ、唇を寄せれば、


「参ったねえ……嬉しい御誘いだけれど……」


少し目を見開いた後、瞼を伏せる。
そして、ゆっくり目を開くと同時に、強い力で顎を掴まれる。


「……けれど、遊ぶのは良くない。
 殺しに来い。マフィアなら」


光の無い目が私を捉える。
身体が。 全細胞が。 蛇に睨まれた蛙の様に固まる。


――嗚呼、この人にも勝てない。
――嗚呼、“好きになる”……。


 


(この歪んだIに名前を付けるなら)

第三十三話 バグ→←第三十一話 予想的中



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 森鴎外   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時

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