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第三十一話 予想的中 ページ33

「君が何日か張っていたのは知っていたからねえ。
 仕掛けるなら今日だと踏んでいたよ」


彼は乗っていた台……
恐らく通気口に届くように乗っていた台から降りる。

――全て、仕組まれていたというのか。


「“太宰さん”。
 一体いつから、気づいていたのですか?」
「君がクイックシルバーだと思った時から」
「……ッ!」


そこまで読まれていたのか。


「でも奇怪(おか)しいねえ。
 私の知っている君は人を傷一つなく仕留められるほど
 器用では無かったと思ったのだけれども……」
「成長、しましたから」


それは素晴らしい、と彼は笑う。


「大方、凶器は口付だろうね。
 僅かに遺体の唇が紅の色をしていた。
 女の子らしいところもあるのだね」


彼は予想を語る。
――今度からは口紅(おしゃれ)をしないようにしよう。


「それにしても……まだ“あの人”の所に居るのかい?
 それとも、“繋がれている”のかい?」


“あの人”。
その言葉が指す人物は首領で間違いないだろう。


「まだ、居ます。 永久に尽くします。
 そう、誓いましたから……」


一方的な誓いでも構わなかった。
それが生きる理由になったから。

だから、その時まで……


「うん……私が思うに、君は自分を大切にした方が好い」
「敵に説得させられるほど、零落れてはいません」


威嚇として短刀を構える。
――この身を、全てを、捧げると決めたのだから。


「……そう、それだよ! Aちゃん!」


太宰さんは突然、嬉々として私の両手を彼の両手で包み込む。
――この人は捉え所が無く、苦手だ。


「その短刀……嗚呼、百戦錬磨の鬼神が如き鋭さ……
 素晴らしいねえ。 良ければ首を刎ねてはもらえないだろうか」


にっこり、と微笑む姿は世の女性を虜にするだろう。
――ああ、思考がクルクルと変わって……苦手だ。


「私には希死念慮があってね。
 だからどうだろう……と、思うのだけれど」
「……構いません」


敵が減るなら万々歳。

彼は礼を述べて手を離す。
自分はそれに合わせて短刀を構え直す。

――さぁ、どう嬲ろう。

私を見つめていた彼の目がうっすらと閉じられる。
光を隠すその目が、背筋を凍りつかせる。


――やらねば、やられる。


 


(強者は手を出さない)

第三十二話 嫐→←第三十話 Oh,My Absinthe!!



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 森鴎外   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時

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