【文スト】首領、１３歳になります。【森鴎外】

第二十七話　正犠牲 ページ29

まだ明るい空が視界に入る。

――何が起きたのか、分からなかった。

気がついたら、仰向けになっていた。


「……それで好い。
　探偵社員ではなく、私を仕留めに来い」


そう云って、
彼の足音は段々と遠ざかり、やがて消えた。

――福沢諭吉。

予定を調べる際に分かった、武装探偵社社長の名前。

偉いとはいえ相手も人間だと見下していたのに。
とんだ牙を隠し持っていたモノだ。

ゆっくり起き上がり、思考に思考を重ねる。

――あの人はこれから体内の毒をどうするのだろう。

生半可な解毒剤では効かない。
そう云う毒を用意したのだ。 それは間違いない。

……そういえば、世の中には“異能力者”という人が居て。
武装探偵社にはその手の人が多くいるらしい。

もし、“あらゆる病を何らかの形で治せる異能力者”が
其処にいるとするのならば。

あの人に、毒は効かない。
ならば、最適解は首を刎ねることだ。

――もう一度。

もう一度だ。
首領が葬ることを望んでいる。

だから、何としてでも、実行する。

そのためには緻密な計画を練らなければ。
まずは探偵社に忍び込もう。

変装の技術は高い方だ。
真正面から行ってもまずバレないだろう。

だが、人目に付くのは避けたい。
通気口に入り、間取りを確認するのが無難だろう。

――そこで、ふと思い出す。
武装探偵社には、元ポートマフィアの人が居るだとか。

“福沢諭吉”の予定を炙ったが、結局はそれまで。
それしかやっていない。

“武装探偵社”について知っていることは無に等しい。


――嗚呼、忙しくなりそうだ。


　


(歓喜か、悲哀か)

第二十八話　言葉の綾→←第二十六話　解き問う質問劇場

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す