第十三話 抑圧 ページ15
――私は苺を最初に食べる。
――あの子は苺を最後に食べる。
矢張り、二人は到底分かりあえないのだろう。
――ならば、もういっそのこと諦めようか。
私とAちゃんは、ただの主従だと。
思い慕うことは、もう止めよう。
「はい、召し上がれ」
小分けにしたホールサイズの苺のタルトを机の上に置き、席に着く。
エリスちゃんはタルトをじっと見つめる。
「どうかしたのかい?」
「……これだけイチゴがあると、新鮮味が無い」
「“苺のタルト”だからね」
「違う、そうじゃない」
フォークがタルトに勢いよく刺さる。
「
いつかは舌が慣れて“味わう”作業が“食べる”作業になる」
「……つまり?」
「サめるの」
冷める?恋が?
始まってすらいないと云うのに?
「…………可笑しなことを云うんだね」
逃げるように視線を逸らす。
――私は恋からも逃げた。
傷つくことは恐ろしいことだ。
だから、逃げる。
期待して、フられて、発狂する前に、逃げる。
「未練たらたらのクセに」
視線を戻して声の主を睨みつける。
まるで言い分が押し通らない子供の様に。
「あたしは
そんなあたしがリンタロウのコト、知らないわけないでしょ」
勝ち誇ったような顔をする。 非道く憎い。
「この問題については逃げるが勝ちなのだよ、エリスちゃん」
だから仕方ないと割り切り――
ため息を吐き、瞼を閉じる。
――さぁ、逃げよう。
――目の前の
「………………よし」
一つの決心をした。
「いずれヨコハマの頂点を決める戦いが始まる。
だとすれば、ポートマフィアの宿敵は間違いなく探偵社だ。
だから――」
「“だから”?」
「探偵社の社長を葬る」
遅かれ早かれ何時かは起こる問題。
それは探偵社も理解しているだろう。
ならば、先手を打つ。
(防衛機制真っ青の攻撃反応)
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蒼(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時