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「「「かんぱーい!!」」」
決起会も含めた親睦会は同施設のダイニングで行われた。明日から練習なのでアルコールは控えた食事はバイキング形式で、座席も話し相手が変わればコロコロ変わっていった。勿論、メンバーにはスタッフも混ざっていて、皆楽しそうだ。
「ちゃんと楽しめてる?」
こういう時でもマサさんはいつものように声をかけてくれる。きっと私の立場というものを理解しているからだろう。料理と飲み物を持って前の空席に腰を掛けた。
『うん…あのね、昴くんの“一生のお願い”なんだって』
「え?」
『昴くんがお願いしてたみたい。どういう意図なのかもう聞けないけど、やってみようと思って』
発信者の意図は100%汲み取れない。
だから受信者は汲み取ろうと努力する。
『それに、マサさんにも恩返ししなきゃと思って』
「俺に?」
『私が苦しかった時、ずっと気にかけてくれてたでしょ。すっごく心強くて、頑張ろうって気持ちになったの。だからその恩返し』
「それは…」
「マサさん、そうやって抜け駆けするから勘違いされるんだよ」
マサさんの隣に座ったのは石川さんだった。
チームの皆と話さなくていいのかな…
「してねえから」
「寺島さん食べてないですよね?取りに行きづらかったら俺行きますよ?」
鋭い、よく見ている。
食事は最初に少し取ったくらいで後は離れたところで傍観しているだけだった。そこにマサさんと石川さんが来てくれて…
『ありがとうございます。でも、皆より動いてないからもうお腹いっぱいです』
「こいつに敬語使わなくていいよ。俺らタメで喋ってるから」
「マサさん、俺に対して当たり強くない?」
「普通だろ」
『あ…じゃあ、タメで』
「うん。寺島さんって、図書館員になりたかったの?」
『うん…』
「本が好きなの?」
『まあね』
私が図書館員になろうと思ったのは将来を考えての事だった。昴くんを支える為に栄養学とか、少しでも知識を増やしたくて本に携わりたかった。面接でそれは言えないから最もらしい事を言って内定をいただき手続きもちゃんと済ませたにも関わらず、希望したこちらから断った。大変申し訳極まりないし、とてもじゃないが言える訳がない。
「そっか、男所帯で不安だろうけど何かあったら言ってね」
『…ふふ、何かあったらって、それ私の仕事なんですけど』
「でも、色んな人からサンドバッグにされるのは苦しいじゃん」
『ありがとう』
石川さんは優しい人だ、気遣い上手。
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作者名:しおん | 作成日時:2019年10月26日 6時