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代表選手を招集した合宿の一日一日はとても質の高いものだった。1プレー1プレーに込められた意図や目的がとても明確で、それを個々のスキル、チームのスキルへと変えていく姿は初めて見るものに近かった。そして、合間にはコミュニケーションを取って練習後は若手の選手達と一緒に洗濯係。その中でもとりわけ仲が良いのは石川くん。あの後話せば、石川くんは大学4年生で私の1つ下だということが判明した。俺にタメ口で祐希には敬語なのはおかしいというマサさんの発言は少しだけ納得した。
「見て見て、寺島さん!俺超ダンス練習したんだ!」
洗濯機がしっかり稼働している間はフリータイム。何故か高橋くんのダンスを洗濯係が見ています。
「どうどう!?」
『わあ凄い!上手!』
「くく、何でそこ律儀。正直に言ってあげるのが本人の為だよ」
隣で見ていた石川くんは大爆笑。高橋くんのダンスで笑っているというより私が笑われてる…
『だって、私ダンスとか出来ないもん!』
「適当にあしらっとけばいいんだって」
「それが一番ひでぇよ!」
数日前のマサさんと似たような事をしてるよ、石川くん。高橋さんは他の洗濯係の人にも見せる為に少し離れた。
「あ、そうだ。寺島さんって大学は栄養学部だった?」
『いや、違うけど…でもアドバイスは出来るよ』
「本当!?」
一瞬曇った表情が一瞬にして明るくなった。見上げる笑顔、見下ろされる笑顔というのはとてもキラキラしていて、私の方が元気を貰ったようだった。
『大学卒業したら一人暮らしだから?』
「んー、まあそうなんだけど、海外なんだよね」
『…マジで?』
「マジで」
成程そう来たか!
確かに、レベルアップをするなら海外に行くのが一番だ。皆がこのチームで相手をするのは2m級の海外勢。日本で日本人ばかりを相手するよりも普段からその高さとパワーに慣れておくのが一番だろう。バレーが好きでもっと上手くなる為には、と考えて行動出来るその姿勢は目を見張るものがあった。
『…でも私、海外にしか無い食べ物とか調理した事ないよ?』
「いや、そんな独特なところ行く訳じゃないから」
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作者名:しおん | 作成日時:2019年10月26日 6時