二十五話 ページ26
｢Aさんって、石上くんの一体どこがそんなに好きなんです？｣
コソッと藤原ちゃんが作業中の石上くんを見据えながら私に問う。
｢あ、それ私も気になります。悪い子では決して無いのですが、石上くんって良くも悪くも存在感薄いというか…
どうしてそこまで彼の事を？｣
｢あぁ、確かに。俺からしてみれば、綾小路って謎な部分多いからな。この位の恋バナは把握しておきたい｣
二人がコソッと言う。
うーん、私ってそんなにミステリアスかなあ？
『……理由、知りたかったら……
会長、石上くん……仕事、疲れてそう……予算決め、期限…早くない……？』
｢ん？あぁ、石上、大丈夫か？石上がキツいなら先生に言って期限を延ばして貰うが……｣
｢いえ、大丈夫っす｣
『でも、石上くん…クマ、凄いよ……？フラフラだし、タイピングもいつもより……』
まぁいつも人間技じゃない位速いんだけど、今はタイピング超速い人って感じだ。
｢この位、ゲームで慣れてるので｣
｢だがな石上、おまえがダウンすると予算所じゃ無く……｣
｢僕一人の所為で予算配分案の提出が遅れる方が問題でしょう、今僕、集中してるのでちょっと……｣
若干不服そうに｢どういう意味だ｣とわたしに訊く会長。
『フフっ……石上くん、大丈夫…？良かったら、手伝う……』
｢いや、大丈夫です。先輩は自分の仕事をしてください｣
『でも、石上くん一人じゃ……』
｢出来ます。たとえA先輩が出来なくても、俺なら出来ます。というかやります、家に持ち帰ってでも｣
『……こういう事、だよ』
｢……成程な｣
｢ええ、よく判りました｣
｢ええっ！？どういう意味ですか、Aさん〜！？｣
『自分で、考えてみてねー……頭働かざる者、情報聞くべからず……だよね、権三郎…？』
｢ちょっとぉ、私全然わかんないですぅ〜！｣
どんな無理難題にも粘り強く取り組んで、最後には結局本当に成し遂げちゃう……
そんな、目の前の事にひたむきで、一直線で……
まっすぐな石上くんの事が、私は大好きなのだ。
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2021年3月10日 23時
