オーエル (ページ26)

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夜

和「あ、俺の席取られてるー」

おいおいこんなとこで寝んなよ、風邪引くでしょうが

仕方なく羽織ってたグレーのロングカーディガンを木のベンチでぐーすかねてる更年期おばさんにかけてあげる

「ん...こっちがいいよぉ..ん、しいたけとトーマス..」

しいたけとトーマスって..

どんな夢見てんだよこいつは

和「おーい、風邪引きますよ」

「けい.....くん...」

和「.....」

.....けい？

和「...おい、風邪引くぞ」

肩を軽く揺すると、閉じていた瞼がゆっくり開いて黒い瞳とパッチリ目が合う

「おぎょっ、にの！」

和「さかなくんかよ」

なんだよ、おぎょって

「びっっっくりしたぁ、いつからいたの？てか私寝てた？」

和「うん、ぐーすかい気持ちよさそうに寝てた」

「寝ちゃったんだ...」

和「デートでもしてたの？」

「デート？」

和「んや、何でもない」

「え、なんの話」

寝起きで全然頭が働かないや

和「覚えてないならいい」

ぽかんとしながら起き上がると、ばさっとグレーの柔らかい布が丸まって足元に落ちる

「ん？これ..」

和「紳士のにのちゃんがかけてあげたの」

「じいじのにのちゃん？」

和「紳士だわ！どんな聞き間違えだよ！」

にのが紳士だなんて、潤くんからわかるけど

なんていうとまた怒るから言わない

「ありがとう」

和「なんだってこんなとこで寝てんのよ」

「ん、なんとなく外に出たくて(笑)」

和「ふーん、まぁいいけど、風邪引くよそんなとこで寝てたら」

「...はい」

和「ん、じゃあおやすみ」

ひらひらと手を振ってにのは部屋に戻ってく

あ、カーディガン返すの忘れた

まぁいっか、明日で

自分の体温でなかなか温まったカーディガンを羽織り、私も部屋に戻った

-

「ヘックション」

今日何度目かのくしゃみが客のいない店内に響き渡る

直「おいおい風邪か？」

「風邪..」

そういえば喉痛いかも

昨日あんな所で寝たからかなぁ

直「そういえば明日栞来るってよ」

「え！栞さん？！」

直「駿に風邪うつすなよ？笑」

「マスクしてこよーっと」

栞さん来るのかぁ

お洒落していかないとなぁ

まぁここでできる格好なんて限られてるけど

薄いベージュのチュニックとボーイフレンドのデニムをパパッと叩き汚れを落とした