恋なんて始まるわけがない３《朝日奈風斗》 (ページ23)

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99.自分からページ23

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春樹との別れから、2週間が経った。

登下校や二人でいる頻度が減り、見かねた彼の友人の問いに
あっさり友達の方がお互い気楽だったと言ってくれたおかげで
最初こそ受けていた注目も落ち着き
仲の良い幼馴染として認知が広がっている。

春樹も気まずさが残るはずなのに、
さくらと共にこれまで通りの空気にしてくれているのが伝わり
自分がどれだけ恵まれているのかを身に沁みて感じる。

そんな、双子からの静かな後押しを受けつつも
私はまだ風斗へのアクションを何も起こせずにいる。

恋はタイミングだなんて言うけれど、その通りだ。
劇場で会ったとき、空港で会ったときに
何か約束を取り付けておくべきだっただろうか。
いやいや、その時には春樹と付き合ってたし…。

ぐるぐると進まない自分の思考を一旦止めるべく
用事も予定もないけれど、事務所へと足を進めた。

「 Aさん、お疲れ様です。」

予定外の私の登場に何も疑問は持たないようで
社員達は仕事に明け暮れている。

放課後のこの時間は、現場同行が多く
いつもよりいくらか人は少ないように感じる。
月の初旬だから、雑誌の撮影で空けているのだろうか。

現場同行やスケジュール・SNSの管理くらいは手伝えるけれど
ギャラ交渉や営業、経理、労務管理なんかは
学生の私に到底できるものではなくて
事務所から少し離れた休憩室で勉強に取り掛かることにした。

カレンダーアプリで共有された予定を見ると
今日は事務所にもう戻らないだろうけど
押さなければ20時前には仕事が終わるようだった。

それまで勉強頑張ったら、今日は連絡してみよう。
言いたいことはまだまとまっていないけれど
あの日の電話の意味と劇場で声をかけた真意が知りたい。
出来ることなら、今すぐ気持ちを伝えるべきだろうか。

A仕事終わったら、連絡取れる?

我ながら、なんて可愛くないメッセージだろうか。
けれど、自分にしては上出来だ。

風斗からの連絡を待ちながら
黙々と目の前のテキストに取り組んだ。

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