96.旅の余韻 ページ20
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10時間のフライトを終えて日本への到着を確認すると
他の国から帰国した生徒達でガヤガヤしている。
修学旅行マジックにかかったようなカップルも見受けられて
少し微笑ましい気持ちになる。
好きな人の隣にいれるって、奇跡みたいなものなのかな。
なんて、少しポエマーな自分が顔を出す。
点呼を終えると私のクラスも現地解散となった。
1人の時間が欲しくて、春樹とさくらの誘いを断り
時間を潰せそうなカフェを探していた。
周りには、
旅の余韻のまま、友人と共に別の目的地へ足を進める者もいれば
足早に帰路へ向かう者も見受けられる。
後者だろうか、絵麻ちゃんと侑介くんの姿が見える。
あちらも私の存在に気づいたのか、駆け寄ってくる。
お互いの思い出話に花を咲かせていれば
2人の後ろから見覚えのある姿が近寄ってくる。
「 これはこれは、侑介と妹さんに、Aさんまで。」
見間違えるはずがない、光さんと風斗だ。
「 光さん、風斗も、お久しぶりです。
光さんも今日で帰っていらしたんですね。」
原作者の撮影見学の予定は把握していなかったので
意外な2ショットに驚いてしまったが
保護者として風斗の撮影期間と合わせて予定を組んだらしい。
「 てか、久しぶりって何。昨日会ったじゃない。」
「 それは言葉のあやでしょ。」
テンションに差はあれど驚く3人をよそに、淡々と返す。
彼なりの絵麻ちゃんへのアピールなのだろうと理解しつつ
偶然劇場で遭遇したこと話すと
絵麻ちゃんは何だか嬉しそうな表情を見せる。
何だか落ち着かない。
ソワソワするのは風斗がいるから?なんて考えていたが
きっと原因はチラチラとこちらへ運ばれる視線だ。
これだけ人がいても
朝日奈家のDNAとは恐ろしい者で矛先は彼等に集まった。
" ねえ、あれってそうだよね? "
" 写真撮ってもらえないかな〜 "
「 じゃあ、そろそろ私は行くので。
少しずつ風斗のことバレ始めてるので、
早めに切り上げた方が良いかと。」
軽く会釈をして、その場から離れる。
事務所に行くことすらも避けていたけれど
ビジネスパートナーとしてなら、普通に話せる気がする。
だからと言って、マネージャーに戻れるわけではないけれど。
さくら、私自分がどうしたいかやっと見えたよ。
……でもその前に、一番に気持ちを伝えなきゃいけない人がいる。
『 急でごめんね。明日少しだけ時間をくれる? 』
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作者名:kiki | 作成日時:2017年6月11日 18時