検索窓
今日:3 hit、昨日:6 hit、合計:8,384 hit

93. MANDERLEY BAR ページ17

.



公演が終わり、余韻に包まれたまま
入口近くの『MANDERLEY BAR(マンダレイ・バー)』へと
スタッフによって促される。


言葉を発さずとも、苦い悲しみや憤りを伝える術があるなんて
予想の何十倍もの充実感に少しぼうっとしてしまう。
……流石は演劇の聖地だ。

春樹を待ちながら、メニューを開くと
想定外の価格に驚かされるが
雰囲気に呑まれているのだろうか。
何ともない顔を作りつつ、ページをめくっている自分がいる。


「 Excuse me? 」

ふと目の前に影が差して、聞きなれない言葉が降ってくる。
英会話なんて授業レベルでしか会得していない
私は次に来る単語にたじろぎながらも顔を上げた。

「 Yes.
……なんだ風斗 何してるのこんなところで。 」

先ほどの動揺とは、また違う。
けれど、今の方がずっと鼓動が早い。

「 撮影終わったって言ったじゃん。

こんな機会ないから観劇してたら
Aっぽい人がいるな〜と思って。」

そう言いながら、風斗は私の目の前の席に腰掛ける。

「 ちょっと、私待ち合わせしてるんだけど 」

「 良いじゃん。そんなに邪険にしなくても。

それとも何?僕といると何か困ることでもあるわけ? 」

……春樹が来る前にどうにかしないとな。
こんなところ見られて、良い気分になるはずがない。
それより、どうして一応売れっ子アイドルを
こんなところで野放しにしてるの。

そんなことを考えながら黙り込む私に風斗の顔が近づく。
自分の顔が熱を持ち、鼓動の速度がさらに増すのがわかる。

「 近いんだけど。

その様子だと、かなり実りのある撮影になったみたいだね。」


できるだけ、平静を装いながら語り掛ける。
久しぶりにマネージャーのスイッチでも入ったのだろうか。

「 自分が演技していない間も、学べることがたくさんあった。

正直、今の僕の力でもらえた仕事じゃないから
兄さんには感謝してるよ。 」

人としても役者としても成長したであろう彼の姿に
嬉しくも寂しくも思うのは
数ヶ月行動を共にしていた親心のようなものだろうか。

着信が鳴り、風斗は私のおでこを突くと
手をヒラヒラさせながら出口へと消えていった。


ものの5分にも満たない時間の中で
目まぐるしく動く自分の心に
これ以上、蓋をすることはできるのだろうか。



.

94.暗中模索のターミナル→←92.ジャックとジョーカー



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (19 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
88人がお気に入り
設定タグ:BROTHERSCONFLICT , ブラコン , 朝日奈風斗   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:kiki | 作成日時:2017年6月11日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。