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28話 ページ30

過去編



貴「___先輩、失礼しま…」





生徒「お前、最近後輩とつるんでるよな。あの背の高い子」





ドアノブに手をかけようとしてそんな声が教室から聞こえてきた。





良くないことだとわかっていても、思わず体の動きを止めてしまう。






生徒「何、好きなの?あの子」





?「……んなわけねえだろ、馬鹿いうなって」






貴「…!」




息が、うまくできなかった。



喉のあたりで、か細くヒュッと空気が流れるだけで息が震える。




その時は何が何だか理解ができなくて、信じられないという思いしか出てこなかった。





先輩はというと、実に可笑しそうに、楽しそうに笑っている声色だった。





?「んー…でもまぁ…好きかもなぁ…
オレ、タイプなんだよ。ああいう騙されやすい頭の悪い女」





貴「!」




?「ん、誰かいるのか?」




手に力が入らなくなり、本を落としてしまい、教室にいる先輩は私の存在に気づいた様だった。




ゆっくりと開かれるドアにすーっと血の気が引いていくのがわかる。




?「嗚呼、、Aか。
どうしたの?マネになってくれる気にはなった?」





でも、そこにあったのはいつもの貼り付けた様な爽やかな作り笑いだった。





貴「…___先輩、私と話すの楽しかったですか。
…私が先輩の笑顔と優しさに騙されてるような馬鹿女だから」





声は震えていた。





?「あー、聞いてたのか…
ったく、今までいい感じに関係作れてたってのに」





先輩の顔から笑顔は消え、不快そうに顔を歪めていた。




嗚呼、やっぱり私は騙されやすい馬鹿女だったんだ。



あの笑顔もあの言葉も全部嘘で、私をオモチャにして楽しんでたんだ。




貴「…」




?「なーに泣きそうな顔してんだよ…あ、そっか。
オレのこと信用してたもんな、お前。フ、、ははは…」






貴「……っ」





私は落とした本を乱暴に拾うと、何も言わずにただただ走った。





この状況から逃れたくて。もう、これ以上傷つきたくなくて。





最後に見た先輩の顔は今までで見たことがないくらい人の悪い顔で笑っていた。















貴「そのことがきっかけで他の人と話しても何か裏があるんじゃないかとか、裏切られるんじゃないかとか色々考えちゃって…最終的にあまり人と喋らなくなっちゃったからうまく会話できなくなったの」




高「…そっか」





俯いてそう呟く彼にに慌てて「高尾くんが気にすることないよ」と笑ってみせた。

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作者名:ヤマ子。 | 作成日時:2019年8月3日 0時

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