君にみえるもの [８]

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日が落ち始めたころ
検査機械から終了を知らせる音が鳴った｡


貴｢出ました､ホルマリン｡｣



デスクスペースに戻りミコトに
検査結果を渡すと聞きつけたメンバーも集まった。



ミ｢おそらく犯人は､
濃度の低いホルマリンを点滴で投与した｡

頭皮の静脈に刺せば跡は見つかりにくい｡｣


貴｢ホルマリンは激物に指定されてるほどの猛毒｡

ホルムアルデヒドは､
空気に触れて酸化すると蟻酸になる｡
蟻から蟻酸が検出されたのは､
ホルマリンがかかって死んだから｡｣


そしてホルマリン最大の特徴は

“防腐効果”

イタリアの修道院の地下に睡っていた
少女の亡骸はホルマリンの効果で
100年腐敗していないという事例もある｡


中｢口の中のボールの跡が
やけにハッキリ残っていたのも
ホルマリンの効果だといえば説明がつく｡｣



胃の中の内応物が異様に腐っていたのも
空気のない場所で繁殖するボツリヌス菌が
ホルマリンを直接飲んで無かったことと一緒に説明ができる｡


ミ｢そこから実際の死亡経過日数を考えると...｣


ミコトがカラカラと転がしてきたホワイトボードを
赤いペンで修正した｡


ミ｢殺されてから１ヶ月以上経ってる可能性がある｡｣



その後ミコトは所長と一緒に
警察署へ報告に向かった｡



⋆ ･⋆ ･⋆ ･⋆




貴｢はい､お疲れ様｣


ミコト達が帰ってくるまで
何も行動出来ない私達は大人しくUDIで待機となった｡

再解剖の後で疲れているだろう彼の隣に座り
コーヒーを差し出した｡


中｢あぁ､ありがとう｡｣


それだけ言うと彼はまた
見落としがないか資料に目をつけ始めた｡

まったくこの人は...

なんて思いながらも自然と資料を手に取り
目を移してしまうのは職業病だろうか...



夕｢これ､六郎が描いたの？｣

六｢あ､いや､違います!｣

夕｢へぇ〜､可愛い！“ピンクのカバ”｣


その言葉に2人のいる位置に視線を移すと
夕子の手に握られていたのは見間違えることの無い
優しいタッチで描かれた可愛いらしい絵｡


貴｢それ...夕希ちゃんの...｣


気づいた時には隣にいたはずの彼は
既に六ちゃんの正面に立ち､胸ぐらを掴んでいた｡


中｢この絵を誰に貰った!
姉さんはこれを持ったまま消えた!
持ってるのは犯人だけだ!｣

貴｢ちょ､落ち着いて...？
六ちゃんの話も聞こう？｣


六ちゃんから中堂さんを剥がすように
遠ざけて距離をとる｡

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