# 先輩の愛し方 . [inym]

# 答え合わせ . Rside ページ47

「駄目って、何が？」



先輩から放たれる言葉の意味を少しずつ噛み砕いて、自分なりに言葉を紡いでいく。

それを伝えようと喉を通すも、今までにない怖さがその言葉をかき消した。


言わなきゃいけないのに。先輩へ。
それでも今更だなんて拒まれたら…もう飽きたと言われたら…


そう思ったら何故かその感情が頭の中でグルグルと回って辛くて、視界が歪んで、思わず声が…出ていた。



「先輩」


「ん？」



ここまで無慈悲な行動をしたってこんなに優しい問いかけをくれる。

それが思い違いではないことを信じて。
我が儘でも臆病な俺から、少しだけの、願いを。



「もう俺、ペットでいいですから……玩具でッ、いいから…っ、離れないでください…ッ」


「……やま、ちゃん？」


「ごめんなさい、先輩…。
俺、今まで先輩にされてきた事、そこまで嫌じゃなくて、でも何なのか分かんないくて……、けど、先輩に好きだって言われて初めて俺もそれだって…」



ー どんだけ酷いこと言われても、されても…山田のこと、好きなんなんだよ。 ー

その言葉だけで俺は、一瞬にして心が軽くなった。素直に、嬉しくなった。


ー そんなのどうでもいいやって、思っちゃうんだよ。 ー

その言葉に、俺も一緒だと、悩みが消えた。先輩の事が好きだから、ここまで傍にいれたんだって。



「今更ッ、好きだって気付くなんて酷いの、分かってます……けど、先輩に、飽きられるのはもっと嫌だって、捨てられたくないって……思っ、て…っ！」


「分かったよ。」



精一杯、先輩に伝えたい事を全部伝わるように、話せるように嗚咽混じりに呟いていると、上から柔らかい声が降り注ぐ。

それと同時に体を痛いくらい強く抱き締められた。



「もう。分かったから。」


「……先輩…？」


「はぁ…もう。あんま、そういう事言うなよ。俺、慣れてないから。」



先輩の顔が見たいと見上げれば問答無用で目を手で塞がれる。
けれど一瞬見えたその表情は林檎のように赤くて目が潤んでいて、普段飄々としている先輩とは想像がつかないほどだった。



「せんぱぃ、俺のこと、……ペットとしてでも、まだ好きですか…？抱いて、くれますか？」


「っ、だ、からぁ…」



真っ暗な視界の中で縋り付くように先輩のシャツを握ると小さいけれど早い先輩の鼓動が触れて俺までもトクトクと胸が飛び跳ねる。

けれどそれも刹那で視界が開いたと思えば、柔らかく温かい感触が唇に触れて甘い先輩の匂いが燻った。

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