# 先輩の愛し方 . [inym]

# ズルいのは . Rside ページ39

「ズルいのは、そっちだろ。」


「は、？」



乱暴に頭をかいた先輩が俺に怒ったように口を開く。



「あ〜もうそうだよ。俺のこといっつも振り回して暴言吐いてるくせに他の男に股開いてるなんて有り得ねぇし、況してや抱かれてる時にお兄さんなんて言った時はふざけんなって怒ったよ。」


「っ…あっ」


「それなのに俺のこと避けるし放っておいたらこっち見てるし話し掛ければ嫌な顔するわって本当になんなのっ！

それに俺が抱いてる時苦しい顔してるって？
そんなのお前がイッた後に泣きそうな顔してたらそういう顔にもなんだろっ。」


「お、おれが…っ泣きそうとか、」



「気付いてないとか本当にタチ悪い。こっちはそれ見る度に辛いってのに…はぁ…。



……でも、」



普段おっとりしている伊野尾先輩の矢継ぎ早に飛び交う言葉に圧倒されてしまう。
話せば話すほど俺を見つめる目が強くなっていくその眼差しにダイレクトに俺の胸をえぐっていく。

けれど、一つ間を置いた後、先程の表情は跡形もなく消えていて、情けないような顔をしてこちらを見た。



「それでも、好きなんなんだから仕方ないじゃん。」



「……え？」



「どんだけ酷いこと言われても、されても…山田のこと、好きなんなんだよ。そんなのどうでもいいやって、思っちゃうんだよ。」



俺と同じくらい情けない声を出しながら少し瞳を潤ませる伊野尾先輩に今起きている事態が追い付いていない。


先輩が、俺のこと、好きって言った…？いや、そんな訳ないだろ。どうせからかってるとか、あっ！ペットとしてとか……そういう…



「っ、この嘘つき……ッ。」


「ふふっ…、ごめん。これは、本心。」


「本心って、最初、あんな事っ」


「うん。最初は、Ω型に興味があってからかっただけなんだ。けど、初めて山田を抱いたとき尋常じゃないくらい武者震いした。それで確信した。

コイツは、俺の運命ｰサダメｰだって。」



先輩の笑った表情は妙に安心した気持ちが表れていてそれだけで目が熱くなる。

あの痛くて苦しいだけだった行為の時にはもうそんなこと考えてるなんて分かるわけないはずなのに……



「え、と、」


「ああ。返事はいい。元々言うつもりなかったし。」



言葉を遮られた後、ゆっくりと立ち上がった伊野尾先輩は俺を起き上がらせてくれる。

けれどそれはこの話の終わりを示していて、放心している俺に向かって先輩は笑いかけた後、ネックレスに指を引っ掛けた。

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