ヌ レ ル __ 。 [inym]

【３９】好きのジカク _ Iside ｡ ページ39

「山ちゃん？」


「ふぇ…？

え……、や、違っ…、！」



ふぇ…？
だって可愛い。(笑)

完全に素だったよね今の山ちゃん。

ってか山ちゃんってば、わたわた慌てだしちゃってるよ。思わず口に出ちゃったパターンだコレ。(笑)


そんな面白いくらい分かりやすい山ちゃんの動きにこっちはだんだん笑みが止まらなくなってくる。

それと同時に山ちゃんの事がどこか愛くるしくて、自然と胸がポカポカと暖かくなった。



「あの……えっとー…、今のはっ…」


「ぷ…ははっ、山ちゃん、落ち着いて？」


「う…うう……」



とうとう我慢出来ずに吹き出してしまえば山ちゃんは顔を真っ赤にしてまた俯いてしまう。



「あはは、ね、なんで顔隠すの〜？」


「っ、止め……、今、見ちゃダメです…っ！」


「ええ〜？」



チラリと俺を見上げて覗くなと告げた後、また恥ずかしそうに唇を甘噛みして目線を下へと落とす。

それでも隠しきれずに見えている真っ赤なお耳は更に上昇し、思わずまた笑みが零れた。



「山ちゃ〜ん、見せてよ〜。ね？ほーらっ！」


「無理、ですッ、ダメ……今は、っ、？！」


「…っ…ぇ、」



なに、その顔…

…なんて表情してんの、山ちゃん…


顔を上げさせた山ちゃんは潤む瞳を少し崩れた前髪で隠され、ほっぺたが苺みたいに赤い。

それでいて少し眉の下がっているその表情は意図せずとも勝手に見惚れてしまうものだった。



「も…やだっ」



顔を隠そうとしながら零れるくらいに涙を溜めだした山ちゃんに少し停止していた自分の思考を再起動させる。

山ちゃん、今の、なに…あのカオは…



「ああ…」



もう…山ちゃんってば本当に可愛い。


そんな可愛いと俺、本気で山ちゃんの事好きに___



「…は？」



あれ…俺今……

……好きになりそうって、思った気が…



へ…？


いや、いやいやいや…
ないないないないない…

無いよそんなの。


確かに山ちゃんは可愛いけど、それだけの筈で。


決してそんな……



「…伊野尾ちゃ、もぅ…見ちゃ、や…っ」


「っ…」



ドクン

ドクン



どこからか溢れてくる堪えきれない熱いナニカ。

それは制御の効かない血流へと流れて俺の心臓をより熱く速く動かせ、キューッと締め上げた。



いや有り得ないよ。俺が男を好きになるなんて…

そんなの有る筈無いのに…



それなのに何故か俺は目の前で顔を赤らめる山ちゃんを見つめて、その想いを否定することが出来ない。


俺は、山ちゃんの事が……

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