ヌ レ ル __ 。 [inym]

【４】濡れているキミは _ Iside ｡ ページ4

そのシルエットが人だと理解する前に、声が出てしまい、思わず次の言葉を喉へ引っ込める。

けれど背を向けていたその人は俺の声に大きく肩を揺らして、ゆっくりと振り向いた。



「ぁ……、あ、…ぁ、の…」


「っ。」



うわぁ…。


これは絶句。



そう心で呟いてから俺は一瞬、雨が気にならないくらいその人を見ていた事に気付く。


傘もささず

座り込む黒髪のその人。


全身をこの豪雨でずぶ濡れにさせ

大きな瞳をコチラに向けながら

言葉にならない掠れた声を放つ。


その少しの動作も無駄ではなく、俺の脳内へ巡らされていった。



「ぁっ…の……、ごめっ、なさ…ぃっ…！」


「えっ、ちょ、ちょっと…！待っ、」



けれどそれもスグ弱々しい謝罪の言葉と共に、その人は逃げるように立ち上がろうとする。



「っ、！あれ……、っ、な、んで…っ」


「あぁ…やっぱり。」



勢いよく立とうとしたその人だけれど止める俺の言葉を待たずして、その場にヨロヨロとまた座り込んでしまった。


まぁそりゃこの冷たい雨の中居たら体の感覚も操作出来るはずないよな。

その俺の見立てはやっぱり間違っていないようだ。


ゆっくりと戸惑うその人へ近付き、傘の中へ体を入れてあげてから俺は言葉を出した。



「大丈夫ですか？」


「っ……」



突き刺さるように攻め立てる雨から安っぽいビニール傘でびしょ濡れのその人を隠す。

けれどまだ不安を揺らせるその瞳は俺への怯えを表しているのがわかっていて。


正直、俺も公園に入ったところ辺りからの突然の自分の行動に理解があんまり出来ていないけれど。


少なくともこんな大雨の中ずっと佇んでいたであろう姿を見ていて、このままじゃこの人が危ないって事は分かっていた。

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