蝶の片割れ【ハイキュー】【鬼滅の刃】

9 ページ9

昨日はとても濃い一日だった。






バレー部の見学に誘われたと思えばその帰り道に鎹鴉が現れて、






お館様や柱の方たちに会えたのは嬉しかったけれど






『・・・鬼、』






なんでまた出現してるのよ・・・






深い溜息を吐いて机に突っ伏した






いや、突っ伏そうとした






「＿＿＿＿＿＿おい、」







『・・・なんですか？すみませんが少し疲れていまして、ご要件なら手短に』






あと少しで額が机につく、といったところで声をかけてきたのは






そう、影山くんである






彼は昨日の朝私を部活の見学に半強制的に誘ったにも関わらず、放課後のチャイムと同時に教室を飛び出し部活へ行った






つまりほったらかし







誘っておいてほったらかし







別にあのまま帰ってしまっても何ら問題はなかったのだが約束してしまった手前、それを破るというのは気が引けた






帰ってしまえばよかったと今では思う






鴉は賢いから私がどのタイミングで帰っても目の前に現れただろうし






それに早く帰っていればもっと長い時間皆さんとお話ができたかもしれない






「マネージャー、やるか」






『・・・はい？』






唐突に言われた言葉に思わず聞き返した





影山くんはいつも唐突だ






「昨日の帰り、前向きに考えるって言っただろ」






山口くんから聞いたのか






『確かに前向きに考えるとは言いましたが、入るとは一言も・・・』







「でも、楽しそうだった」







「ずっと笑ってたぞ、お前」






『私はいつも笑顔ですよ』






「・・・今みてぇな、変な笑顔じゃなかった」






『・・・そうですか』






驚いた。私の笑顔をそんな風に言う人は今世では初めてだったから







正直、部活中や部活終了直後は入ろうか本気で悩んでいた






マネージャーの仕事は大変だけれど楽しかったし






彼らが必死になってボールを追う姿は輝いて見えて、なんだか眩しかった






＿＿＿＿＿＿確かにあの時私は、この人たちを支えてみたいと そう思った






けれど、それよりも優先すべきこと







影山くんやバレー部の人たちを含め、私にはこの国に生きているみんなの幸福を守る義務がある。







鬼という存在を知らせてはいけない






幸せは壊されてから初めて幸せだったと気づくなんて







そんな思いをさせてはいけない

10→←8

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す