NO.27 ページ29
どんなに寒くても楽と居られる事が嬉しいAは、もう寒いなんて事は忘れてしまっている。
だが久し振りに会った楽は顔が赤く様子が可笑しいという事に、Aもさすがに不思議に思った。
「どうしたの?今日何か変じゃない?」
「…別にいつもと変わんねえよ。」
先程から全く目を合わせないので顔を覗くが、逸らされて素っ気ない返事をされてしまう。
それが妙に心に刺さり、らしくもなく落ち込んでしまうAは、目に一杯の涙を溜めて楽に問う。
「…私の事、嫌いになっちゃった?」
「は!?」
予想しなかった発言と今にも泣きそうなその声に楽は戸惑いを見せる。
「いや、別にそういう訳じゃなくてっ!」
必死に弁解の言葉を探して目線を漂わせる楽は、先程の事を思い出し顔が真っ赤になる。
流石に眠っているAにキスした事を言える訳はなく、どうしよう…と悩むが、体にくる暖かい温もりに驚いて頭が真っ白になってしまった。
「…お願い。楽は私の事嫌いにならないでっ…。」
その初めて聞いたすがるような悲しそうな声に、楽は驚きを隠せない。
その時、楽は初めて気付く。
自分はまだAの事について全然知らない。
親の事も、どういう境遇で育ったのかも、姉弟の事も、まだ自分は知っているようで、Aという一人の人間を知らないという事を…。
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琳架 - オリジナルフラグを外してくださいね。 (2018年3月17日 12時) (携帯から) (レス) id: c9d4810d09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月神姫 | 作成日時:2018年3月17日 12時