弓兵:A ページ14
アーチャーは焦っていた。
戦い方はわかる。
呼吸の仕方、間合いの取り方、牽制の方法。
薙刀は不気味な程によく馴染むし、使ったこともあった。
そう確信出来る。
であれば私は戦人だったのでしょう。
その確信はある。
でも−−
……
それだけがすっぽりと抜けてしまっていた。
マスターとなったお人には怒られるし、
自分に出来たその空白に関係しているのであろう宝具も、
故にアーチャーは焦っていた。
ランサーなのかライダーなのか全くわからない。
騎乗しての戦いに"慣れ"ている。
槍を振るった時の熟練さもある。
少女らしい風貌の勇ましい敵に、私はどうしていいか分からなかった−−
ただ、それでも。
侮ってくれるなよ。
薙刀が、刀が当たらずとも。
この身燃え尽きる迄、
……願わくば、その空白が埋まりますよう。
「『
まずい、この宝具は!
成り行きで共闘していたアサシンが足を奪われた槍−−!!
避けないと!はやく、はやく!
避けられなければ、殺される!
足を奪われれば、戦術も、何もかもが無駄になる!
本能が叫ぶ。悲鳴を、嬌声を響かせる。
ふと、魔力の流れが強く、太いものに変わる。
予期せぬ力添えに−−
アーチャーの姿は、鬼と成った。
"鬼種の魔"
"血脈励起"
足を狙うならば、こちらも足を狙ってやろう!
弓を引き絞る。
魔力は広がる。
それはまるで太陽のように!
「宝具…仮想展開」
狙いはただ一つ、敵の
アーチャー、巴御前。
いろしろく髪ながく、容顔まことにすぐれたり。
ありがたきつよ弓、せい兵、馬のうへ、かちだち、
うち物もツては
鬼にも神にもあはふどいふ
(覚一本 平家物語 巻九 「木曾最期」)
「…ッ、燃えろ、飲み込め−−何もかもッ!!」
その矢は燃え上がる。
迫り来る槍と交差する−−
「はァッ!!」
−−前に、どちらも止められた。
第三者の剣によって。
聖杯戦争第一夜。
三つ巴の戦いが始まる。
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作者名:石蕗 | 作成日時:2018年1月16日 14時