二面性ゴースト【浦/島/坂/田/船】 (ページ25)

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次の日になり学校からの帰り道。
もう暗くなった道をいつものように重いリュックを背負い歩いていた。

明日は英語の章末テストがあったはず。今日はちゃんと勉強しないと。
そんな事を思って歩みを早めた時、体の右側になにかの気配を感じた。

「おかえりー」

「っひ、ひゃあ！」

顔のすぐ横に昨日見た紫色の髪の整った顔があり、ここが住宅街だということも忘れ悲鳴を上げてしまった。

音もなくスーッと私の前までやってきて正面に立った、昨日の彼。
近くにいることでより感じる強い霊気。

その霊気に思わず全身の鳥肌が立ってしまった私に、形の整った赤い唇を歪ませた彼の少し開いた口に見えるのは、普通の人間では有り得ないほどの尖った歯。

いや、きっと違う。これはきっと歯というよりも、牙と言うほうが正しい。

「君さ、俺が人間じゃないっちゅうことわかるんやろ？」

「………何のことですか」

「ほんまのことやろ？」

まずい。これはかなりまずい。

ほぼ確定で彼は私が“認識できる人間”だと気づいている。
最悪だ。きっと彼は彼自身が言うようにそこらにいる低級の弱いものじゃない。それは嫌というほど伝わる霊気で分かる。

「俺が“吸血鬼”ってこと、気づいてるんやろ？Aちゃん」

やっぱり。

恐ろしいほど整っている容姿とさっきちらりと見えた鋭い牙から予想はついていたが、実際に見るのは初めてだったので思わず1歩後ろに下がる。

その様子を見て面白そうに笑う彼を見て、あれと思った。
聞き間違えじゃなければ、さっき私の名前…………

「………なんで、名前を、」

「初対面の俺が知ってるんかって？」

なんでやと思う？と聞かれるが私に到底わかるわけが無い。
恐らく不気味がっている私の表情を見て、彼は少し顔を歪ませた。………それは何故か酷く悲しそうに見えてしまって。

「……志麻」

「え？」

「俺の名前。じゃあねAちゃん」

また来るよ

と言葉を残し、次の瞬間には彼は私の目の前から消えていて。
呆気に取られたまま私は「志麻、さん」と口の中で教えてもらった名前を呟く。

この名前に心当たりはないし今までに会った記憶も無い。少し見かけるだけでも彼の容姿を忘れるなんてことは無いだろう。

そして私はうーんと頭を悩ませた所で明日の英語のテストを思い出して慌てて家への道を急ぐのだった。

＿＿＿＿＿＿『……やっと、会えた』