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「舶来品で、海を越えた向こうの方々はこの菓子を、‘ちょこれいと‘と呼ぶそうです」
ちょこれいとが入った、金色の紐が蝶に様に結ばれた桃色の箱を渡す。この村と真逆の明るさを放つその箱は、センラ様が持つとぴったりとあてはまった。土を目に焼き付けながら、上の方から紐を解く音が聞こえると、肩の力が一気に抜けた。
氷の上に置いたけれども少し形がいびつになった、ちょこれいとと呼ばれる茶色の物体を、果たしてこの鬼がお気に召すかはわからない。が、新しいものにすぐに突っ込んでいく性分の彼は、いつだって手を緩めずに毒でも食らいつく。そして毒なら酒で流し込んで分解してしまう。くれぐれも、このセンラ様を簡単に亡き者にできると考えてはいけない。
「鬼の子に気に入られたかった娘たちは、嘘にうそを塗り重ね、鬼の子と自分を褒めちぎった。
鬼の子は毎日、鼻につく甘すぎる香水の匂いと嘘に囲まれながら、ひたすらに嫁を探した。
そうして、ついに鬼の子は見つけた。
*
センラ様とはまだ一回も視線を合わせていない。合わせてしまったら、離れられない気がして。
刹那、頭蓋骨を頭に乗せられる。
「ところで、お菓子はないんですか?」
村娘の中で一番にかわいげのない女と言ったら村の男たちはそろって私を指さす。それが不満であったといえば嘘になるが、妙に腹にたまっていくお湯のようなぬるい何かはセンラ様と会うたびに少しづつ水かさを増していく。それがどうしても抜けることはなくて、透明になった首輪の感触は気色が悪かった。
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sakako(プロフ) - え、え、好きです…!どタイプです!!素晴らしいお話たちを読ませてくれてありがとうございました! (2019年11月2日 12時) (レス) id: d08b40b16f (このIDを非表示/違反報告)
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