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17.最後の涙 ページ18

優しく頬を拭われた。
サンジは私を気遣って、何も聞いてこない。
その優しさにまた涙が溢れそうになる。

潮風が私の髪を揺らして、頬を冷ましていく。


「…私は、私の世界が嫌いでした」


「うん」


少しだけ話してみようと思った。
サンジはただ聞いてくれる。
変な慰めの言葉も、余計な助言もない。
その距離感に口が軽くなる。


「便利で、安全で、平和なのに…私には余計なものしかなかったっ…」


思い出すのは窮屈な家庭のこと。
地獄のような学校のこと。
全部全部辛いことばっかり。
胸を張って語れる輝かしい思い出が一つもない、そう思うと自分が酷く惨めだった。


「本当に…辛かったなぁ…」


暖かい温度に包まれた。


「もういいよ。辛いなら話さなくていいから」


サンジのワイシャツから香る海の匂い。

嗚咽は押し殺した。
何も遮るものがない夜の海は、少しの音でもよく響くから。
泣いてることに気づかれないように。

この世界に来て、もう何度泣いただろう。
いつか帰るかもしれないあの世界を思い出して、いつも苦しくなる。
楽しまなきゃ損だと、ゾロに言われた。
確かにそうだと思うのだ。

もう泣かないから。
今だけは。
今だけはどうかこの海の匂いに縋らせてほしい。




18.それが証拠→←16.包まれた夜



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ぷりん(プロフ) - 「ぱずる」さん» そうなんですね!何も知らずごめんなさい😿とても面白い作品でお気に入りです!更新頑張ってください応援してます✊🏻🤍 (2022年8月24日 0時) (レス) id: 30c6d797b4 (このIDを非表示/違反報告)
「ぱずる」(プロフ) - ぷりんさん» 誤解させてしまってすみません!今この作品書き直しの途中でして、まだ14話からは更新できてない状況です。続編はまだ手をつけてないのでそのままなんです。誤解させてすみません点 (2022年8月23日 21時) (レス) id: 6f1abe1470 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん(プロフ) - 13話から話が飛んでいて次の続編へ行ってしまうのですが14話からは作者様が消されてしまったのでしょうか😿 (2022年8月23日 21時) (レス) id: 30c6d797b4 (このIDを非表示/違反報告)
シェイガー(プロフ) - こんな現象が本当にあったらいいのにな〜笑笑 (2019年9月2日 3時) (レス) id: 524b76be29 (このIDを非表示/違反報告)
むちゅ - 学校も楽しくないし行きたくない、アニメを見てた方が、本当に幸せだと感じる。そう思うのは私だけですかね… (2017年1月9日 22時) (レス) id: 81902d63ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:「ぱずる」 | 作成日時:2016年8月31日 23時

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