鶴の鳴き声 (ページ11)

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9話ページ11

鶴丸side

この際、ハッキリ言わせて貰おう。
俺はウメが好きだ。

もうずっと前から。
…見えるはずない俺を、唯一見る事が出来たのは、ウメだけだった。

俺は元々いた本丸から逃げてきた。
思い出すのは、嫌な顔で笑う”元主”。

泣きながら逃してくれた、光忠に一期、三日月達。
今は何処で何をしているか。

…新しい主と楽しく暮らしてれば、それでいい。
俺は、逃げ出してきてフラフラ彷徨ってる時。

ウメに会った。
今よりもっと昔…それこそ、Aと同じくらいの時に。

真っ黒な髪に目。
キリッとした口元。

艶やかで短い髪が、そよそよと揺れた。

ウ)「…貴方、家がないの？」
その目は、俺だけを見つめていた。
あの時からすでに、射抜かれてたのかもしれない。

ウメは、そう言う類が見える体質らしく、常に結界を張っていた。
つられるがまま、ウメの家に居ついてもう何十年も経つ。

俺は、あいつの側にずっといた。
それこそ、あいつが次期当主になるか揉めた時も、親と喧嘩し家出した時も、あいつが神楽を舞った時も、それから…

あいつが、恋に落ちるその瞬間も。
”恋”が何だかわからなかった。

わかったのは、あいつが結婚して、子供が生まれた時だった。
既に俺は出遅れていた。

あの頃のウメは、旦那に先立たれ塞ぎこんでた。
それを支えて、一緒に子育てして。

それから子供がおっきくなって、母親になって戻ってきた。
それから…Aと出会った。

いつのまにか、ウメは年をとり、シワシワになってしまった。
それでも。

俺の目には、変わらずあの頃のまま。
出会った頃に見えてた。

ウ)「国永」
ウメは、俺を”国永”と呼ぶ。
それが堪らなく好きだ。

ウ)「国永、あの子をお願いね。1人になるの。…支えてあげてちょうだい」
Aはウメのたった1人の孫。
いつも愛おしそうに見つめてた。

それに、嫉妬した事は一度ではない。
愛されてるAが羨ましいかった。

と、同時に。
何処かウメの血を引いてると思うと、愛おしかった。

ウ)「私の後は…あいつらが来るかもしれない。…ねぇ、国永。最後のお願い、聞いてくれないかしら？」
あぁ、嫌だ。
最後なんて言わないでくれ。

ウ)「あいつらから…政府から。Aを守ってほしい。あの子は渡さない」
俺は、俺は…
もっと、お前といたかった。

鶴)「…任せてくれ」

ウ)「ありがとう。国永。…あぁ、やっと。私はあの人に会えるんだね」
あぁ。
行かないでくれ。

好きだ。
好きなんだよ、今も。