10話 ページ12
皆には見えてない鶴丸は。
ずっとずっと隣にいてくれた。
視界に映る白が。
どれだけ心強かったか。
2日間泣き続け、3日目には涙が枯れていた。
3日目にして、ようやく落ち着いた今日。
おばあちゃんの遺言書を読む。
「…貴方はこれでいいの？」
内容は、私を”後継者とする”と書いてあった。
…いいも何も、そう言うつもりで来たんだし。
当たり前だ。
「…そう。私は帰るわね。お金は毎月振り込むし、何かあれば連絡して」
あ)「…わかった」
お母さんは、向こうにアパートを借りてる。
最近、軌道に乗って来たらしい。
だから、一緒には住めない。
それは元々そうだったから、気にしない。
気にするのは…もう側には鶴丸しかいない事だ。
不満があるわけじゃない。
だけどやっぱり…寂しい。
お母さんは明日、帰って行く。
そしたらまた。
この場所にふたりぼっちになる。
鶴)「よぉ、A。…そんな険しい顔をするな大丈夫だ。俺がいるからな！」
見透かしたように、”大丈夫”と言ってくれた鶴丸に少しずつほだされていった。
鶴)「…さて、今日からどうする？」
あ)「んー、とりあえずご飯食べよ！」
今日から、2人きりの生活。
見よう見まねの料理は、おばーちゃんの味とは程遠かった。
それでも、”美味しい”と笑ってくれる鶴丸は優しい。
あ)「…なーんか、忘れてるよーな…？」
鶴)「ウメに言われたのか？」
あ)「うーん…大事な事だったんだけど」
考えてれば、丁度玄関から音がなった。
…誰？
あ)「お客さん？…見てくる」
鶴)「あ、おい！」
鶴丸が何か言ってた気がしたけど、来ちゃった。
あ)「はーい」
ガラッと開ければ、真っ黒いスーツを着た人が立っていた。
これ…あの日の人…？
唐突に。
何をするべきだったか、思い出した。
結界…結界を張るべきだったんだ。
目の前の男が、中に入ってきた。
あ)「えーっと…？」
「貴方を迎えに参りました」
あ)「え？」
男の人は、私に向かって手を伸ばす。
…どうしよう。
鶴)「それはいただけないなぁ」
固まっていたら、目の前に鶴丸が現れた。
私を庇うようにして、立ってくれてる。
あ)「…っ鶴丸…」
…安心する、背中。
「…鶴丸国永…貴方がここにいる理由を私は知ってます」
鶴)「…っは！だろうな」
「あぁ、貴方の本丸は全滅しましたよ？…最後の5振りを残して」
鶴)「なっ……お前…っ」
鶴丸が、刀に手を置く
あ)「鶴丸！それは、ダメだよ！」
必死で止めるも、顔は怖かった
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作者名：なーこ | 作成日時：2017年3月6日 17時
