政務官殿の憂鬱【マギ】

Ｎｏ．8 ページ9

*マスルール





「着きました。
この山では色んな素材が採れるんですよ。」



シンドリアからかなり離れた場所にある山奥

ここに来るまでに何度か変なのに絡まれたが
少し睨みを効かせると脱兎の如く逃げ出した




「私はしばらくこの辺りで採取をします。
マスルールさんはそこの木陰でお休みください。」



長旅での俺を気遣っているのだろう




『…Aも少しは休んだ方がいい。』


「私は平気です。こう見えて体力には自信があるんですよ。」




そう言って袖を捲り力コブを見せようとする
しかしそこには力コブはなく
ただ細くて白い腕を見せられただけだ




『…。』


「…。」




静かに袖を直しAは採取を始めた

採取を手伝おうかと思ったが
Aが次々と手にしていく野草と雑草の違いがいまいちよくわからない

それに俺が採取に夢中になってAを見失う可能性もある

黙って木陰からAを見守ろう


木陰に腰を降ろすと心地よい風と
小鳥のさえずりが眠気を誘った

Aはこの辺でしばらく採取すると言っていたし
少しくらいなら大丈夫だろう




〜


*A



『マスルールさん、私もう少し向こうの方で…って、寝てる…？』



採取を始めてしばらく経ち
気がついたらマスルールさんからかなり離れていた

これ以上離れてはいけないと思い
マスルールさんに声をかけたけれど返事が返ってこない

木陰で座っているマスルールさんに近寄ると
寝息をたてていた



(起こしちゃ悪いな…)



見つけた綺麗な花で作った冠をそっとマスルールさんの頭にかぶせて

私はマスルールさんから少し離れた場所へ移動した





*

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