第73話 ページ26
所詮、違う本丸の刀...
確かにそうだ
でも...
『そんなこと言わないで下さい』
「A？」
『確かに三日月さんは違う本丸の刀剣男士です。でも、見習いの時にお世話になったのはこの本丸。他人ではないと思います』
「だが、お主は俺を思い出せない」
『そ、それは...』
確かに三日月さんのことを思い出せていない
少し懐かしい感じがすることはあるけど
何があったのかとかは全く...
「お主の心の中にいる三日月宗近は俺ではないのだろう」
『え？』
「先程の電話、三日月宗近からなのだろう？」
『は、はい』
「嬉しそうな顔をしていた。この本丸に来てからは記憶のことに悩んでいて、そのような笑顔は見ていなかった」
『そ、そんなこと＿＿』
「見ていれば分かる。お主は記憶を思い出すことに力に入りすぎている」
『せっかく機会を頂いたんです。水の泡にするわけにはいきません！』
「お主は真面目だな」
『そ、そうですか？』
「真面目だが、どこか抜けていて放っておけない。お主は変わらないな...」
『え？』
「やはり俺は記憶を失った今もお主に惹かれている」
「...っ！」
「先程の電話で確信した。楽しそうに俺と同じ三日月宗近と話しているのを見て感じた苛立ち...これは嫉妬だ」
嫉妬...
「以前にもこのような感情を味わったのだろう。覚えている。心とはやっかいなものだ」
『三日月さん...』
「全てを思い出したわけではない。だが、俺にとってお主は昔と変わらず大切な存在のようだ。Aよ。お主はどうだ？」
『私は...今は審神者様に仕えている刀剣男士だとしか...』
「そうか...」
それ以上に思うことはない
いや、あってはならない
「お主と再会出来たことは嬉しく思う。だが、以前のように共に居ることは出来ん。あと2日でお主はまた俺の傍から消えることになる」
『....』
「ならば、この残された時間俺の傍に居てはくれぬか？」
『え？』
「近侍としてではなく、お主と共に過ごしたい」
『近侍としてではなく...』
「記憶を思い出すきっかけになるやもしれん」
『確かにそうですね』
三日月さんとの記憶がないのだから、三日月さんと過ごせば何かを思い出せるかもしれない
でも...
どうして私だけ三日月さんを思い出せないのだろう...
まるで誰かに記憶を消されたかのように思い出せない
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作者名：ゆきんこ | 作成日時：2020年9月22日 20時
