陽の目にも涙【巴日和】 (ページ1)

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「今出てるドラマ!!俳優の人とキスしてたね!?!?僕という人がいながらありえないね!!」

家に帰れば開口1番そう叫ばれた。

玄関に立って私の帰りを待っていたらしい彼は、頬を膨らませてドラマの演出に怒っていた。

「ただいま。それでもなるべく恋愛ドラマは断ってるよ」

「でも他の男とキスしてたね!!僕がいるのに...」

綺麗な紫色の目をうるませて、ついには涙をこぼし出す。

「日和君泣かないでよ〜!アイドルがそんな顔したらダメだよ?」

私より10センチは背の高い彼を靴を脱ぎ散らかして抱きしめに行く

「Aちゃんは僕だけのだね」

「そうだよ。だから泣かないで〜!」

日和君は誰かに嫌われるのがいやらしい。みんなそうだけど、日和君は特にだ。

そうして恋人からの好意を享受するのが自分だけじゃないのも彼はいやらしい。

「今日キッシュ作ろうか!」

「うん...」

「じゃあ一緒に買い物いこ。暖かい格好して車乗ってね。助手席には今までもこれからも日和君しか乗せないからね!」

「僕の特等席だね」

「そうそう」

私は女優をしていて、有難いことに色んなドラマに引っ張りだこで恋愛ドラマもよく出演する。

そうしてキスやベッドシーンが入れば日和君にこうやって泣きつかれるのもまあよくある。

逆に日和君はアイドルでEdenというユニットで活動していて、女性人気も高いし、所謂ガチ恋勢が多い。

お互いにお互いが不安になるけれど、私には日和君の涙を見たファンはきっといないだろうという優越感がある。

それに日和君は私の出ているドラマやバラエティーや映画や雑誌などを全てチェックしている。

日和君も私が結婚したことを公表しているため舞台挨拶やバラエティーで惚気ることが多く、なんだかんだ愛されていることは知ってるだろう。

車に乗り込む日和君は私が見たことない上着を着ていて

「日和君その上着どこで買ったの?」

「ファンからの貰い物だね」

「ふーん」

日和君のは絶対女性ファンじゃん

「ヤキモチ妬いてるんだね?Aちゃんは可愛いね」

「その上着私にも貸してね」

「もちろん」

家から出発するとスーパーに着くまで日和君が色んなことを話してくれる。

「茨が凪砂くんのサンマの骨をとってあげてたんだよね。過保護にも程があるね」

楽しそうにメンバーの話をしてくれる日和君は私より大きな体躯だけど、きちんと私より歳下だということを感じれる。

「日和君かわいいね」

「僕は可愛いしかっこいいし美しいね!!」