夢が開花するとき、その色を。

衣装係の戸惑い 〜瑠璃川幸〜 ページ8

「で？警察沙汰に巻き込まれるから学校に行きたくない？」

普通、たかが高校レベルで脅迫状とかありえない。

「信じてないでしょ」

頬を膨らませるAにチョップを食らわす。

「それは事件に関して？？？俺がナイフを蹴り上げたことについて？？？」

「両方に決まってんじゃん、天才ニート」

Aは、比較的仲の良い人や嫌われたくない人とは饒舌に話す。

劇団内ではオレと、天馬、一成、綴、臣、紬、あず姉くらい。

なんでポンコツ役者とコミュ力高男がいるのかは謎だけど。

Aは表情筋を動かしながら不貞腐れる。

「褒めてるの？？？貶してるの？？？」

「何この従兄妹じわる」

スマホを取り出しながら、インチキエリートは笑いを堪えていた。

まだ少し寒さが残る時期なので、オレたちはオカンの入れたホットミルクを飲む。

「あ、いたいた」

ゲームをしていると思っていた至は調べごとをしていたらしい。

「Trickstarの衣更真緒と、fineの姫宮桃李」

この２人が、Aが助けた人らしい。

画面をじっと見つめてから、指を指してオレの方を見て顔を上下に揺らす。

それから時計を見て、台所にかけてあるエプロンを探し始めた。

そういえば、もう５時だったんだっけ。

オレが確認した時には５時半を指していて、Aは晩ご飯にメニューに悩んでいた。

「あ！いたッスよ天チャン！」

「おい転ぶぞ太一！」

玄関からバカ犬とポンコツ役者の声が聞こえた。

一瞬で騒がしくなったなと思いつつ、今度は何が起きたと目を向ける。

「Aチャン凄かったッス！惚れ直したッスよ〜！」

…本当に、何があった。

2019/11/15

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